相手に気づきを促すコーチングの質問の基本と例

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今の職場でコミュニケーションの方法として、コーチングのスキルを取り入れようと考えている人も多いのではないでしょうか?

たとえば、上司が部下に対して、またはマネージャーが他のメンバーに対してコーチングスキルを取り入れるということはよくあります。

コーチングはお互いの信頼関係を構築しつつ、自己解決する力を育成していくことができるからです。そのためには、どんな場面でどんな質問をすると有効なのか知っておくことが必要です。

しかし、やみくもに質問だけを暗記しても実行しても意味がありません。

今回は部下の目標や問題に適したコーチングの質問についての例や注意点について詳しくお伝えしていきます。


1.コーチングと日常生活の「質問」の違い

1-1.コーチングの質問の目的とは?

コーチングで大切なスキルに、「傾聴」「質問」「承認」の3つがあげられます。

これは、相手の話をしっかりと受け止めながら聴き、質問していくわけですが、目的を見失うとただやみくもに質問を繰り返し前に進まない対話になりかねません。

コーチングの質問の目的は、「相手の中にあるものを引き出す」ということです。

それは、自分では気づいていない自分の長所であったり、自分の本当にやりたいことであったり、目標を達成するための意欲や行動だったりします。

つまりすべては「相手のための質問」です。これは傾聴も承認も目的はまったく同じです。

1-2.自分のための質問ではないということを知っておく

私たちは日ごろどのような質問を相手にしているのでしょうか?

  • こっちの資料とこっちの資料ではどっちがプレゼンに向いていると思う?
  • お客様からこんなクレームがきてるが、誰が担当したんだ?
  • 今月のノルマを達成するにはあと何件契約が必要なんだっけ?

などなど、共通しているのは「自分が知りたいこと」という点です。

つまりこういった質問は「自分のための質問」なのです。

問いかけるという行為は同じではありますが、コーチングの相手のための質問と自分ための質問ではまったく異なることを認識しておく必要があります。

質問の目的の例としては以下のようなものがあります。

・問題点を明確にする
・相手の視点を変える
・考えを整理する
・気づきや発見を促す
・目標を設定する

前提として、こうした目的を頭に入れておくことが大切です。

1-3. クローズドクエスチョンとオープンクエスチョン

質問は大きく分けて「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」の2種類があります。

クローズドクエスチョンとは、YesかNoかで答えられるような質問です。
相手の意志の確認には効果的ですが、自分自身と向き合わせたり、問題の解決方法を自分で考えさせるという目的にはあまり適していません。

クローズドクエスチョンの例
・今よりも社内で活躍したいと思いますか?
・この仕事をしていて充実感を感じますか?
・会社に貢献したいという気持ちはあるのか?

こうした質問は相手の内容の確認を取ったり、コミットメントを高めたりする効果があります。

逆にオープンクエスチョンは、「いつ」、「どこで」、「誰と」、「なにを」、「なんのために」、「どうやって」という「5W1H」の質問になります。
これは相手の情報を広く収集するために用いられ、YesかNoかでは答えられません。

オープンクエスチョンの例
・いつまでにどんな役職に就きたいと思っていますか?
・この仕事で何をしているときに充実感がありますか?
・どうやって会社や社会に貢献していきたいですか?

オープンクエスチョンは、相手に考えさせるものとなり、自由な発想や意見を聞く際に有効であり、より具体的に目標や行動をイメージすることが可能となります。

また、相手に自分で答えを見つけてもらうための質問なので、自発性を引き出すことができる効果があります。

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2.具体的なコーチングの質問例

2-1.目標や目的を明確にする質問

コーチングをする際に重要になってくるのは、相手が「どうなりたいのか」、「どんなゴールにたどり着きたいのか」といった目標を明確にすることです。

コーチングはクライアントが目的地に着くための支援を行うものだからです。

ここで注目すべきなのは、多くの社員は「遅刻しないで毎日出勤する」「報告は必ず抜けないようにする」「クレームの来ない接客をする」というように、「しなければならないこと」を目標に掲げているケースが多いということです。

そのため、本人が「本当にやりたいこと」を気づかせるような質問を行うことが大切になります。

【本当にやりたいことを引き出す質問例】
・あなたが理想とする働き方はどのようなものですか?
・どうしてそれはそんなに重要なのですか?
・その目標を達成すると、将来にどんな影響がありますか?

こうしたことを考えることはほとんどないでしょう。質問により本当に得たい未来をイメージさせるような質問をしていきます。

2-2. 何が必要なのかを考えさせる質問

目標や目的をはっきりさせられたら、次は現状を見つめる必要があります。

このギャップを明確にし、どんな行動をしていくべきなのか、どう問題を解決していくべきなのかを考えさせることがコーチングの重要なテーマなのです。

【現状を見つめさせるための質問例】
・目標達成した状態を100点だとすると、現状は何点ですか?
・どういった問題があるからその点数なのですか?
・目標を達成するうえで、何か障害になっていることはありますか?

目標と現状をしっかりと見つめることができれば、今後何をすべきかも見えてきます。自分の問題点や改善しなければならない点もはっきりするでしょう。

2-3. 視点を変えたり、選択肢を増やす質問

しかし、「思い込みが強すぎて目標を達成するための行動に気づけない」というケースもあります。
自己肯定感が低く、自信が持てないために、「自分には無理だ」と決めつけているような部下もいるでしょう。

そうした場合は「新しい視点を持つこと」や「選択肢を増やす」といった質問が有効です。

【視点を変えたり、選択肢を増やす質問】
・もし制限がなかったら、目標を達成するためにどうしますか?
・〇〇さんだったらどんなアクションを起こすと思いますか?
・相手の立場から自分を見つめてみるとどう見えますか?
・〇〇という短所は、逆に長所だと考えるとどんな特徴がありますか?
・これまでの成功体験から何か学べることはありますか?

このように視点を変えることによって、「実は目標を達成するための材料を自分は持っていた」ということに初めて気づくかもしれません。

「今まで認めたくなかった自分の足りない部分」への気づきにもなります。そういった点を明確にしていくことで、目標を達成するために必要な行動が洗練されていきます。

2-4. 行動を具体的にするための質問

気づきが生れたら、次は実際に行動に移していく必要があります。
行動を起こさなければ状況は変わりませんし、目標を達成することはできないでしょう。ここまでの質問で部下はもう何をすべきに気づいているはずです。

実際にやるべき行動を自分で声に出し、自己対話することによって行動をより明確化していきます。具体的にした方が行動に移しやすいという点がポイントです。

【行動を具体的にするための質問】
・決めたことに対し、今何ができますか?
・最初のステップとして、何から始めていきますか?
・いつから始めますか?
・誰の協力を得て進めていきますか?

何をすべきなのかだけではなく、いつから始めるか、といた期限を設けることも行動を促す上で重要です。

学生が定期試験で目標点を取るために計画を立てて、それを実践していくようなイメージをするとわかりやすいでしょう。

具体的な行動計画までしっかりと立てていくことで、実際に1週間、1ヶ月が経過して、計画と比べてどうだったのかという振り返りができます。

計画通りに行動できていれば、自分は今、目標を達成する途中にいるんだという自信にも繋がるでしょう。

上司もその行動を労うことで部下への承認にもなります。コーチングの中で振り返りとフォローは大切です。

そのため、一度だけの面接や対話だけで完了するのではなく、定期的に状況を確認しながら長期的な視野で進めていくことが重要なのです。

2-5. 本気を引き出すための質問

コーチングは「本気で変わりたい」「この目標を絶対に実現したい」という強い思いがあってこそ、問題点や解決策といった気づきを生み出すことができます。うわべだけの対話では、相手にこのような強い思いを抱かせることはできないでしょう。

この点でジレンマを感じる上司も多いかもしれません。「どうしたら部下は本気で問題に向き合おうとしてくれるのか」という悩みです。

何も考えていないように思える部下かもしれませんが、必ず「本当にやりたいこと」、「理想とする姿」はあるはずです。

本人がそこに気づけていないから本気になれていないのだとしたら、それを引き出すのもコーチングの役割です。あえて以下のようなストレートな質問をしてみることも効果的です。

【本気を引き出すための質問の例】
・今、本気でやらないと今後どうなってしまいますか?
・いつから本気でやれそうですか?
・目標を達成するために何か犠牲にできることはありますか?

新しい行動を起こしていくうえで、これまでの悪い習慣を改善したり、無駄な時間を省く必要もでてきます。本気で目標を達成する覚悟をつけるための質問も大切です。

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3. コーチングの質問を行う際の注意点

これまでお伝えしてきた質問は、あくまでも相手と対等な立場からのコーチングによるサポートであることを忘れてはいけません。

これは「上司という立場で相手を改善させるための質問」ではありません。行動を具体的にするための質問も、本気を引き出すための質問も、その視点を誤ってしまうと誘導尋問のようになってしまいます。

そうなると部下の返答に対し、否定や矯正といった指摘が入ってきます。それはもはや相手のための質問ではなく、上司にとって自分のための質問です。

相手は自分の考えや価値観を否定され、もう本音では話をしなくなるでしょうし、信頼関係も構築されないでしょう。上司の考えや価値観を教え込むための質問ですので、コーチングではなくティーチングの要素が強くなります。

部下であってもコーチングを行う際は対等な立場を意識し、相手の話を受け止め、相手のために質問することが重要です。

コーチングは、自分の思い通りに部下を誘導する手法ではないので注意してください。

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相手の考えを引き出す質問を!

「目標は定まっているが視点が足りない」、「視点はいいが、行動が伴っていない」、「行動はしているが本気になりきれていない」など部下によって状況は異なります。

対話をしてじっくりと相手の話を聴いていく過程で、この部下にはどんなサポートが必要なのかが見えてくるはずです。

ぜひ相手に合わせて的確な質問をして、部下の頭の中を整理しつつ、目標を達成するために効果のある具体的な行動を促してあげてください。

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