「思い込み」の厄介な点は、自分自身では気づいていないことが多いことです。
他人を色眼鏡(自分の価値観)で見ることに対し肯定的な人はあまりいないと思いますが、実際は自分も色眼鏡で相手を見ているかもしれません。
しかし、色眼鏡をかけている時間が長すぎるので、すでに肉体の一部と化してしまっていて色眼鏡をかけていることに自分自身で気づけていないのです。
人は知らず知らずのうちに思い込みによって縛られています。それが自然と対人関係を悪化させたり、自分に対して否定的になったりする原因になっています。
あなたが今悩んでいることは、思い込みから解放され正しい判断ができるようになることで、改善される可能性があります。
今回はそんな思い込みをなくす方法についてお伝えしていきます。
この記事の目次
1.思い込みが起こる原因
1-1. 幼い頃の環境の影響が大きい
思い込みはなぜ起こるのでしょうか?
人が思い込みをして色眼鏡で相手や自分を見るのは「心の防衛機制」のためです。
これは、自己を守るために無意識に起こる精神的な防衛メカニズムであり、自分の心の動きや相手への認識について自分の都合のいいように無意識のうちに捻じ曲げているのです。
特に幼い頃は、親からの愛情は子供にとっては死活問題です。
親から愛されることは、生きることを承認されたことであり、親から愛されないことは絶望を意味します。親からの愛情は、それほど重大事項なのです。
親から注目され、認められるためには何が必要なのか。それを考え、行動することが自然とその子供の性格や価値観となっていきます。
満たされたいという子供の頃の心が、どのような愛情表現だったとしても「これが親の愛情だ」、「こうすれば親から愛情を受けられる」という思い込みに繋がっていくのです。
そしてその行為を続けていくことで、無意識のうちに人格の一部が形成されていくのです。
また、幼少時代の経験は大人になってから以下のような思い込みを生み出します。
自分は無力だという思い込み
例えば、「親から愛情を受けられない自分は無力だ」と思い込んだ場合、自分の行動や性格に対して常に否定的になります。
何をしても失敗や反省点ばかりが気になり、自分自身への正しい評価ができなくなります。
兄弟で比較され、満たされなかったために自己肯定感が低くなっているケースこれに当てはまるでしょう。
自己否定の思い込みは自分の魅力を押し殺してしまい、対人関係を含め様々な場面で消極的になってしまうのです。
自分は不憫だという思い込み
親に受け入れてもらえなかったことから、「誰も自分のことをわかってくれない」という思い込みが生まれることもあります。
そして、自分が不憫だと強く感じることになるのです。
「自分は誰にも受け入れられない」と思い込んでいるので、無意識に「孤独を選ぶ」傾向にあります。
しかし、自分が無意識で人を避けているため、自分が遠ざけられていると感じてしまいます。そのために周囲に対して、嫉妬や妬みを持ってしまいがちです。
1-2. 小さなきっかけがどんどん増幅していく
幼いころからかけ続けてきた色眼鏡(価値観)によって、世界は自分の見たいように見えてきます。
つまり、自分自身の見たくない部分は見えなくなるのです。
その代わり、自分の見たくない部分を相手に発見した時、自分の問題が相手に見えてしまい、嫌悪感が無意識から込み上げてきます。
このよう心理的なメカニズムを心理学では「投影」と呼びます
そして、自分ではその原因がよくわからず、「なぜかあいつを見るとイライラする」といった現象になります。
最初はちょっとした心の引っかかりだったものが、否定的な投影によって際限なく増殖していき、相手に対して過剰に攻撃的になり、相手の存在自体を否定することに繋がっていきます。
これは、人間関係のトラブルやいじめなどの原因のひとつです。
大きな問題なのは、憎しみを持った対象は自分自身の認めたくない価値観であり、相手というよりも自分自身の問題であるにも関わらず、気が付かないために解決しないということです。
1-3. 過去に縛られている状態
思い込み自体が過去の経験から気づかぬうちに形成されていくものですが、はっきりと認識している過去の過ちや反省に縛られ続けているケースもあります。
- もし、あの時、ああしていれば
- こんなことが起こらなかったら
といった変えることのできない過去ばかりに目が向いており、大切な今、この時に意識が向けられていない状態です。
「ああしていれば今の自分は違っていた」という思い込みのため、諦めの言動が多く、周囲のモチベーションを下げてしまいます。
1-4. 未来に捉われている状態
逆にまだ現実化していない未来にばかり捉われ、どんどんと不安になっていくケースもあります。
- 今は良くても、将来はダメかもしれない
- こんなことをしていたら、いつかは失敗する
といった思い込みのため、なかなか勇気を振り絞ってチャレンジできない状態です。
ネガティブな発言が多く、周囲に不安や恐怖を撒き散らかすことになります。見えない恐怖は想像によってどんどん巨大化していくのが問題です。
1-5. 周囲にどう見られているのかに捉われている状態
自分が周囲にどう見られているのかということも、思い込みに影響を及ぼします。
「この人はいつも明るく元気だ」というように見られている場合は、そのポジティブな周囲からの期待に応えようとするでしょう。
弱気な発言はせず、前向きな発言が多くなってきます。
人からどう見られているかがセルフイメージとなり行動や考え方を限定するのです。
「この人はいつも暗く、消極的だ」というように、ネガティブな面が強い場合も同じように影響を受けます。
明るく人に接しなければいけないとは思っていても、無意識で縮こまった言動をしてしまうことになります。
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2.思い込みをなくす方法
それでは、思い込みはどうすればなくすことができるのでしょうか?
2-1.相手への思いに疑問を持つ
最初に、相手に対する思い込みをなくす方法についてお伝えします。
相手に対する思い込みをなくすには、相手の嫌な部分を冷静に考えてみることです。
例えば、相手の嫌な部分を考えてみると
「自分が相手の自由奔放な振る舞いに対しイライラしている」ことに気付き、「もしかすると、自分がもっと自由奔放になりたかったのかもしれない。それをここまで我慢してきたのか」という洞察に繋がることがあります。
自分の色眼鏡(価値観)で相手を見ていた問題を、自分で引き受けることができるようになっているのです。
すると今までどうしても許せなかった相手に対する感情が和らぎ、対人関係が改善されます。
思い込みから解放されることで、自分の内面で目をつむっていた問題も解決に向かっていくのです。
思い込みをなくすためには、まず「自分の相手への思いに疑問を感じる」必要があります。
そして色眼鏡をはずし、自分自身を縛っていた価値観から解放されなければなりません。
2-2.インナーチャイルドとの対話
幼い頃に親の愛情を受けるために培ってきた価値観は、大人になってからも心の内側に存在し続けています。
承認されるために良い子を演じてきたかもしれませんし、注目してほしいがために弱ってみせたり、傷ついてみせたりしていたかもしれません。
思い込みをなくすためには、そんな自分の内側の声に耳を傾ける必要があります。
子供の頃から繰り返してきた行動や考え方は、もはや癖というよりもあなたの一部です。それを「インナーチャイルド」と呼びます。
そこに対面するということは、見たくもない過去の体験を思い出すことになるかもしれません。
インナーチャイルドにはぜひ優しく接しましょう。これまであなたの心を守ってきたあなたの一部だからです。
具体的な方法として、「手紙を書く」という手法があります。
今のあなたが幼い頃の自分自身に宛てた手紙と、幼い頃のあなたが今の自分に宛てた手紙です。
幼い頃に向けて手紙を書く時には
「あなたのことが大好きだ」
というような承認の内容をメインにします。
今の自分に向けて手紙を書く時は、利き手の逆で書き、
「私のことに気付いてほしい」
というような願望の内容をメインにしていきます。
そんな優しい会話が、少しずつ「こうあらねばならない」「これができないと価値はない」といった思い込みを解きほぐしてくれるのです。
2-3.今に目を向ける
過去に縛られた思い込みをしている場合や未来への不安に捉われた思い込みをしている場合は、とにかく「今の自分」に目を向けましょう。
とは言っても無意識に過去や未来の不安に引っ張られてしまうので、今に集中する工夫が必要になります。
方法としては、瞑想でもいいですし深呼吸でもいいのですが、「自分の呼吸だけに集中する時間を作る」ことです。
鼻から吸って息を止め、口からゆっくり吐き出す。この行為だけに集中します。他の事は一切考えません。
こうして、過去や未来から自分を切り離す訓練をしましょう。
2-4.カウンセラーに頼る
思い込みから解放されるためには、相手の事よりも自分を深く知ることが近道です。
しかし、そのためには「自分の弱さや不完全性」に気付いていかなければなりません。
自分の弱さを認め、受け入れることは困難なことで、地道に根気強く自分と向き合っていく必要があるでしょう。
なぜなら投影は自分を守るための心理的なメカニズムであり、どうしても見たくはないものだったりします。
自分を省みても簡単に洞察できたり、発見できたりするわけではないからです。
そこで、専門的な知識のあるカウンセラーに手伝ってもらい、カウンセリングを受けることで少しずつ洞察していく方法もあります。
プロに手を借りること、これが最も確実で効果的な方法でしょう。
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まとめ
人は誰でも少なからず思い込みをして生きているということがいえるでしょう。
そのために事実が歪み、摩擦や衝突、戦争などが起こるのです。思い込みは対人関係を悪化させるだけではなく、実は自分自身の可能性を閉ざすことにも大きな影響を及ぼしています。
思い込みをなくすためには、まずは自分が思い込みをしていることに気が付かなければなりません。人の話に耳を傾け、読書などで他人の考えに興味を持つことが、自分自身の洞察に繋がっていくこともあります。
思い込みをなくして、気持ちを楽に生きて行けるようになれば、これまでとはまったく違う充実した生活を送ることも可能です。
なぜかこの相手が気になると思った時は、ぜひ、自分自身を見つめ、向き合ってみてください。投影は成長のきっかけです。そこから洞察と新しい発見によって、必ず自分を成長させることができるのです。