「部下の指導に悩んでいる」
このように考える上司は少なくないでしょう。
部下を指導するのはとても難しく、「どのように振る舞えばいいのかわからない」と悩んでいたり、「部下から嫌われたらどうしよう」と不安を抱えている人もいるかもしれません。
部下を指導する上では、指導の仕方(テクニック)も大切ですが、あなたの信頼を得る(失わない)ことも非常に重要です。
部下も人間ですので、あなたのことを信頼できなければいくら方法を身につけたとしても、部下の成長は望めません。
そこでこの記事では、部下を指導するときのポイントや部下の指導で必要なスキルについて詳しく解説します。
この記事を読めば、初めて指導する立場になった人でも、部下から尊敬される指導役になることができるので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
1.指導する上でまず知っておくべき5つのポイント
まず、どのような仕事を指導するときも絶対に守るべきポイントがあります。
このポイントさえ守ることができれば、たとえ多少教え方が下手でも、部下の尊敬を失うことはありません。
しかし、どれだけあなたが仕事のできる上司でも、次の5つのポイントを忘れてしまうと、部下から嫌われたり、尊敬されなくなってしまいますので必ず抑えるようにしましょう。
- 失敗するな!は厳禁
- 質問の仕方1つで部下は成長する
- 部下と価値観を揃えるのが大切
- 指導したことをすぐできる人はいないと心得る
- 部下は常にあなたを見ている
ここからは、5つのポイントについて詳しくみていきましょう。
1-1.失敗するな!は厳禁
まず、部下に対して「失敗するなよ!」という言葉は使わないように意識しましょう。
励ますつもりで「失敗するな」と言ったとしても、逆にプレッシャーを感じたり、本来の力を発揮できず、失敗してしまうことがあります。
また、失敗するなと言われ続けると、とにかく怒られないことだけを意識するようになり、自発的に行動しなくなってしまいます。
そもそも、初めての仕事で失敗するのは当たり前。
なので、部下を指導するときは「失敗するな」や、「上手くやれよ」という励ましの言葉は使わないようにしましょう。
1-2.質問の仕方1つで部下は成長する
次に、部下はあなたの質問1つで成長することを覚えておきましょう。
逆に、下手な質問を続けると部下はどんどん仕事に対する自信ややる気を失ってしまいます。
ポイントは、次の2つです。
- 「質問された部下はどのように思うか」を考えて質問すること
- 原因追及よりも、問題解決を重視すること
例えば、部下が何か失敗したときに、「なぜ失敗したんだ?」と聞くと、部下は自分が責められたように感じてしまいます。
一方で、「どうすればできるようになると思う?」と質問すれば、部下に自分で考える癖をつけさせることができます。
その結果、次に似たような問題が生じたときは自分で解決できるようになります。
仕事ができる上司の場合、「なんでこんなこともできない(わからない)んだ!」と言いたくなる場合もあるでしょう。しかし、部下にとってその仕事は初めてであり、失敗してしまうのも当然なのです。
なのにそうした言い方をされてしまうと挑戦することもしなくなり、成長が止まってしまいます。
指導役の質問1つで部下がどのように成長するかが決まります。ですので、声をかけるときはしっかりそのことを意識しておきましょう。
1-3.部下と価値観を揃えるのが大切
上司のあなたは部下と価値観を揃えることも大切なポイントです。
当たり前ですが、部下はあなたと違う価値観を持っています。特に会社に入りたての場合、仕事における価値観はほとんどないため、あなたが思う価値観とは大きな齟齬があります。
そのため、あなたが当たり前だと思っていることでも、部下にとっては非常識なことがある(逆も然り)と肝に命じておきましょう。
例えば、「レポートを作っておいて」とあなたが指示したとしましょう。
このとき、「最初から完璧なのを作るよりも後で、一緒に直すのが一番効率の良い仕事のやり方」だと思っている人もいれば、「まずは完璧に仕上げてから提出しないと、上司に失礼だ」と思っている人もいます。
これらはどちらも間違っているわけではありませんよね。でも、あなたと価値観が違えば、レポートが仕上がるまでの時間や出来は異なります。
価値観は仕事をしている中で次第に分かってくることです。
そのため、「あの子の働き方はちょっと自分と違うな」と感じたときに、叱るのではく話し合いながら価値観をすり合わせるのが重要です。
1-4.指導したことをすぐできる人はいないと心得る
指導する立場になると、「教えたことはすぐにできる」と思ってしまいがちです。
しかし、実際には教えてもらったことをすぐにできる人はいないと言えます。
あなたも社長から起業のやり方を教えてもらっても、すぐには起業を成功させることはできないでしょう。
また、あなたが新人だった頃、教えられたことがすぐにできたでしょうか?
それと同じように、部下も教わったことをすぐにできるとは限りません。なので、失敗するのは当然だという認識で接するようにしましょう。
1-5.部下は常にあなたを見ている
最後に、部下は常にあなたを見ていることを忘れてはいけません。
あなたが部下の発言や行動の一つ一つを見ているように、部下もあなたの態度や仕事の取り組み方をじっくり見ています。
もし、あなたが部下に指導していることを、あなた自身がやっていなかった場合、部下はあなたを尊敬することはなくなり、言ったことを聞かなくなったり反抗心を持つようになってしまいます。
そのような事態を防ぐためにも、部下は常にあなたのことを見ていると意識しておくことが大切です。
部下を指導するポイントのまとめ
ここまでは、部下を指導するときのポイントを解説しました。
たとえ、指導が上手にできなくても、これら5つのポイントを守っていれば、部下があなたのことを嫌ったり、尊敬しなくなることはまずありません。
ただし、部下を指導する上でスキルを身につけておけば、より楽に指導できるようになります。
そこで以下では、部下を指導する上で役立つ具体的なスキルについて解説します。
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2.部下を指導する人に必要な5つのスキル
部下を指導する人は、次の5つのスキルを身につけておくと、比較的楽に指導ができます。
- スキル1.褒めて一緒に喜ぶ力
- スキル2.事実で叱る力
- スキル3.部下に謝る力
- スキル4.権限移譲する力
- スキル5.言葉を選ぶ力
それぞれ、順番に見ていきましょう。
スキル1.褒めて一緒に喜ぶ力
まず、褒める力は指導役にとって重要なスキルです。
部下も人間なので、自分の成長や仕事の結果を褒めてもらえなければ、次第にやる気を失ってしまいます。そこで、部下が何かを達成したときに、適切に褒める力が求められます。
褒めるときのポイントは、「すぐに、具体的に褒める」ことです。
例えば、部下に任せた仕事がしっかりできていたら、直後に褒めるようにしましょう。仕事終わりに褒めたり、後日まとめて祝うのは意味がありません。
また、褒めるときは「このレポート上手にまとめれたね!」と抽象的に褒めるのではなく、「レポートありがとう。色使いが綺麗でとても見やすい!」と具体的に褒めるようにしましょう。
具体的に褒めることによって、部下は何が良かったのかを学習します。この積み重ねによって、部下は力をつけていきます。
このように、褒めると言ってもただ褒めればいいわけではありません。そのためにも、しっかりと褒める力を身につけておきましょう。
スキル2.事実で叱る力
次に、部下が問題を起こしたときに「事実で叱る力」も大切になります。「事実で叱る力」というのは「その人の行動」について叱るということです。
悪い叱り方:書類間違えするなんて社会人としてダメだ
良い例では、「書類の書き方を間違えた」という「事実(行動)」を注意しています。一方、悪い例ではその人の「人格」を否定していることになります。
事実を否定されると、「あ、確かに間違っている。気をつけよう」となりますが、人格を否定されると「なんでそんなこと言われないといけないんだ!」という反抗心や「自分はだめな人間なのかな」といったネガティブな感情を部下は持ってしまいます。
このようなことが続くと、部下は話を聞かなくなってしまい、最悪の場合退職してしまうこともあります。
そうしたことを防ぐためにも、何がいけなかったのか事実をきっちり叱る力が必要です。
スキル3.部下に謝る力
自分にミスがあったときに、自分のミスを素直に認めることも大切です。
「上司のミスは許されない」と思い込むと、ミスをしたときに誤魔化したり他人に責任を押し付けてしまいます。
しかし、明らかに上司のミスなのに、それを認めない上司を目にすると「この人はすぐに失敗を押し付ける。信頼できない」と部下は判断します。
仕事では信頼関係が何よりも大切なので、自分のミスははっきりと認めるようにしましょう。
スキル4.権限移譲する力
次に部下に権限を与えられる懐の広さも求められるスキルです。
「部下に任せると心配」という思いから、大切なことは全て自分で決めてしまう人もいます。
しかし、上司が全て決めていると部下は責任ある仕事をできなくなってしまいます。その結果、仕事へのモチベーションが低下したり、成長が止まってしまうことも考えられます。
重要な仕事であっても部下に任せて、間違っていれば指導をすれば良いのです。そうやって部下は成長していくものです。
部下の成長を望むのであれば、部下に権限の一部を与えて判断させられるような懐の広さも必要です。
スキル5.言葉を選ぶ力
最後に、言葉を選ぶスキルも必要です。
これまで見てきたように、指導役の言葉一つ一つに部下は影響を受けます。
思い浮かんだ言葉を口に出すのではなく、「この言葉を伝えると部下はどのように思うのか」をしっかりと考えた上で発言できる力が必要です。
このとき大切なのは、「相手の立場になる」ということです。
相手の立場になるとは、「自分だったらどのように思うか」と考えることではありません。なぜなら、自分とその人では、人生観も仕事観も全く違うからです。
正しく相手の立場になるためには「このように言われたら相手はどのように感じるだろうか?」と、相手に成り切って考えることが大切です。
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まとめ
部下の指導に必要や考え方やスキルについて解説しました。
部下を指導には、たくさんのスキルも求められるため、簡単にはできません。
しかし、今回紹介した5つのポイントを抑えることで、驚くほど部下の指導が効果的なものになります。
さらに、具体的に部下を指導するときは
- ステップ1.計画を立てる
- ステップ2.環境を整える
- ステップ3.コミュニケーションをとる
という3つのステップで指導します。
部下の指導は上司にとって非常に大切な仕事なので、きっちりと準備をして行いましょう。
詳しくは、残念な上司にならないために!初めて部下の育成をする人が知っておくべき全知識の記事で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。