コミュニケーション能力はビジネスにおいてはとても重要なのは誰しもが思うことでしょう。
しかし、コミュニケーションスキルというと、「話す力」や「伝える力」と考えがちですが、それだけではありません。
実は「聴く力」もとても重要な要素になるのです。
コミュニケーションは伝えることより、聴くことが大切だという説もあるほどです。
今回は、コミュニケーションによって成果を出していきたい人やコミュニケーションスキルを高めていきたいという人のために、とても大切な「傾聴」についてお伝えしていきます。
傾聴は仕事のみらなず、人生、人間関係、家族といった様々な場面において、あなたの強い味方になってくれます。
この記事の目次
1.傾聴の重要性
1-1.傾聴とは相手の話を「聴く」こと
傾聴とは、一般的にはアメリカの臨床心理学者「カール・ロジャーズ」による来談者(クライアント)への心理療法の傾聴技法をさします。
ロジャーズ氏は
人は本来、自分自身を受け入れたときに変化や成長が起こる
と述べています。
カウンセラーは、クライアント(来談者)を無条件で受け入れ尊重することによって、クライアント自身が、自分自身を受け入れ尊重することを促すのです。
その環境を作るために重要なのが「傾聴」になります。
傾聴とは「深いレベルで相手を理解し、気持ちを汲み取り、共感する」ための関わり方であり、相手への態度になります。
傾聴というとただ単純に相手の話しに耳を傾けて「聞く」というイメージを持たれがちですが、そうではなく、話を聞き、相手を見つめ、心情に寄り添いながら「聴く」ことです。
もともとは傾聴とはカウンセリングにおけるコミュニケーションスキルのひとつでしたが、その有効性から近年ではビジネスシーンなどでも盛んに採り入れられるようになってきています。
1-2.傾聴による効果
営業トークのように、商品やサービスを巧みに説明し、相手の購買力を刺激する力はビジネスパーソンにとって大切なスキルです。
ただ、相手と信頼関係を構築するためには、一方的に話すだけではなく、相手の話しを聞くことで、考えや気持ちを的確に読み取ることができなければなりません。
そうすることで、会話の中から相手の本当のニーズを引き出すことができるのです。
思考というのは頭の中にある間は曖昧なものです。
曖昧な状態で言葉にして相手に伝えるのですが、話せば話すほど自分でも聞くことになるので、少しずつ思考や感情が整理されていくという経験がある方も多いかと思います。
すると今まで気づかなかった自分自身の状態に気づき始めるようになるのです。
そして問題を解決するために、自分が何をすべきかといった具体的な思考や行動ができるようになります。
これが、ロジャーズ氏の求める「自己対話」による変化と成長です。
さらに、傾聴するほど、相手は自分の悩みやコンプレックスなどの深い話をし、心を開いていく状態になります。
そしてそういった話を自分のことのように受け止め、共感してくれる聞き手に強い信頼を抱くようになるのです。
「コミュニケーション上手は、聞き上手」と言われるのには、こういった背景があります。
300名以上の目標達成をサポートした
コーチングを体験できます。
2.傾聴を行う具体的な方法
2-1.傾聴を行う準備のポイント
傾聴を行う際には、ただ相手の話を聴こうとするだけでなく、聞き手の意識や心理状態がとても重要です。
ですので、傾聴を行う前にしっかり話を聴くための準備が必要になります。
相手の話に集中できないようでは、相手の気持ちを汲み取ることも共感することもできません。
例えば、何か別の事情で気持ちが乱れていたとしたら、まずそのようなネガティブな自分の感情を切り離す必要があるのです。
まずは相手の話しを聞く前に自分の思考や感情をリセットしましょう。
意識を自分の呼吸だけに向け、深呼吸を10回ほど行いましょう。こうすることで、相手の話しに集中できる状態にすることができます。
また、相手にどのように接するのかという「姿勢」は明確にしておきましょう。
- 話を聞き、理解や共感を示す姿勢
- 否定せずに相手の話しを受け止める姿勢
- 笑顔で感謝の気持ちを持ちながら聞く姿勢
- とても大切な人の話だと思って聞く姿勢
そういった事前の「心構え」は大切です。
このような姿勢を示すことにより、聞き手が話に興味を持ってくれたり喜んだり感謝してくれたりします。
そうすると、話し手はより心を開きやすくなり、深い理解や共感を形成することができるようになります。
事前に、過去にそういった気持になった体験を思い出したり、大切な人をイメージしたり、相手のことをもっと知りたいという好奇心を沸かせることで、ポジティブな心理状態で話を聞くことができます。
傾聴を行うには、まずは相手をしっかりと受け入れられる準備をしておきましょう。
2-2.傾聴を行う3つのステップ
傾聴には「受動的傾聴」「反射的傾聴」「積極的傾聴」の三段階のステップがあります。
以下でそれぞれについて解説していきます。
受動的傾聴
受動的傾聴はまずとにかく相手の話しを聴き続けることです。
ただ耳を傾けて聞くだけならば簡単ですが、耳だけではなく目を使い、心情を察しながら聴くことは集中力を要しエネルギーが必要になります。
受動的とはいえ、やるべきことは盛りだくさんです。
「相槌」や「頷き」といった動作は相手に聴いているというアピールになりますので、頻繁に用います。
ただし、同じテンポでは聞いていないと思われてしまうので効果がありません。強弱や緩急といったメリハリが大切です。
相手の目や表情、ジェスチャーを観察しながら、「アイコンタクト」を送ることもいいでしょう。相槌や頷きと同じような効果があります。
一番のポイントは話が止まったタイミングです。
この静寂の間にすべきことはひとつになります。それは「ひたすらただ待つこと」です。自己対話の最中には、話し手が頭の中で自問自答するような沈黙が訪れるのです。
反射的傾聴
反射的傾聴は相手の話しを伝え返す(オウム返しをする)ことです。
これは「しっかりあなたの話を聴いている」というメッセージになります。
とはいえ、ただオウム返しをすればいいというわけではありません。
相手の立場に立って聴くことが必要ですし、相手がどんな思いで、何を望んでいるのか。その心の内側に目を向けなければなりません。
例えば
あなた「そうですか。プロジェクトが成功するかどうか、夜眠れないほど心配なんですね」
という感じです。
相手の自己対話を促進させるために、相手が使った言葉そのまま用いて、「感情を返す」というやり方があります。
話し手が言葉にするだけでなく、聞き手がその言葉を使用してまた耳にすることで、話し手は自分自身を見つめるきっかけになるのです。
ここでは相手の話しを「要約してから返す」ために、「パラフレーズ」という手法が使われることもあります。
同じ言葉を繰り返すだけだと単調になりますので、別な言葉に言い換えてみるのも効果的なのです。
具体的には
あなた「そうですか。仕事の不安で寝不足なんですね」
といったイメージですね。
また、言葉だけではなく、表情や仕草なども相手に合せることで、聞き手が感じていることを返すことができます。これは「ミラーリング」と呼ばれる手法です。
積極的傾聴
じっくりと相手の話しに耳を傾け、表情や仕草を観察し、心情に寄り添うのが傾聴の基本ですが、そこからあえて一歩踏み込むのが積極的傾聴です。
相手に話してもいいんだという許可を与えることができます。
後述する「傾聴でやってはいけない注意点」でも触れることになりますが、積極的傾聴といっても、話を聞き手の意図する方向に誘導するわけではありません。
あくまでも自己対話をより促進していくのが目的です。
ですから相槌としては、「その話をもっと具体的に聞きたいですね」とか「もっと詳しく聞かせてください」という感じになります。
こうすることで、聞き手が興味関心を持っているということを積極的にアピールすることもできるのです。
300名以上の目標達成をサポートした
コーチングを体験できます。
3.傾聴でやってはいけない注意点
ここまでで具体的な傾聴の方法についてお伝えしてきましたが、実際にやってみると相手を理解し、共感するために聴き続けることがなかなか大変だということに気が付きます。
それは聞き手がどうしても「正しい道を示したい」「アドバイスをしたい」という気持ちになってしまうためです。
アドバイスをしている時点で、もはや傾聴から大きく逸れてしまっています。
話を聴くのではなく、話をする側になってしまっているからです。
相手の心情に寄り添うどころか、話し手の価値観を押し付ける結果になってしまい信頼は生まれません。
もちろん説得しようとしてもいけませんし、相手の話しがどのような内容であったとしても批判してはいけません。
否定や反論は、相手を無条件で受け入れ尊重するという傾聴の目的を台無しにしてしまいます。
どういう展開であっても話を遮ってはいけません。
話をしていくことで、自己対話が促進し改善に気づくことはあるでしょうが、そちらに強引に誘導してはいけないのです。
我慢して聴き続けることが最も重要なのです。
かといって、別な事を考えながら話を聞いていたのではリアクションも無反応なものになってしまいます。
聴いているという姿勢は常に示していくことが肝心です。無反応では、話し手の意欲が削がれてしまうのです。
共感することは大切ですが、同情するのは話が別です。相手がどんな気持ちで話をしているのかが大切であり、それを哀れむような聞き手の感情は、自己対話に余計な情報を混ぜ込むことになり、健全な気づきや成長を阻害する恐れがあります。
聞き手と話し手の話す量は、9:1ぐらいの感覚で、とにかく聴くことに集中しましょう。
間や沈黙は先程述べたように、自己対話に必要な時間ですので大切にしてください。沈黙を嫌がり、話を急かすような姿勢もいけません。
・アドバイスをする
・説得する
・批判する
・話を遮る
・話を誘導する
・無反応
・同情する
・話を急かす
など
300名以上の目標達成をサポートした
コーチングを体験できます。
まとめ
傾聴はカウンセリングやコーチングにおいてとても重要なスキルになりますが、日頃の生活や職場においても意識して、相手の話しを聴くことができるようになれば、人間関係は確実に良好になります。
夫婦関係も円満になりますし、親子関係も大きく改善されるでしょう。
特に多くの社員の話を聴く立場にある人事や管理職の立場であれば、傾聴を重要視していくことで、会社を活性化することができるでしょう。
人は自分のことを優先し、理解してもらいたいので、聴くことよりも話すことに力を入れがちです。
しかし、時には自分の伝えたい気持ちを抑え、相手の気持ちを汲み取ることに比重を置いてみてください。
傾聴というコミュニケーションスキルによって、様々なシーンで成果は大きく変わってきます。