人は子供の頃から、家族・集団・組織・社会といった他の人たちとの関わり合いの中で生活しています。
その中で対人関係の構築について経験し、学んでいくわけですが、必ずしも良好な人間関係を築けるわけでありません。
特に職場における対人関係は重要です。
朝から晩まで、毎日のように顔を合わせる相手だからです。
この人間関係がうまくいかないような状況になってしまうと、強いストレスを感じてしまい精神的な疾患に繋がる危険性すらあります。
また、心理学者のアルフレッド・アドラーによると、「人間の悩みは全て対人関係の悩みである」と言われるほど対人関係というのは私たちの人生においての課題だと言えます。
では、対人関係で悩むようになってしまった場合、どうすればいいのでしょうか?
実は「自分を変える」ことで、相手との関係性を改善できます。
今回は「対人関係の悩みを克服する方法」について大切なことをお伝えしていきます。
※パワハラやセクハラで悩んでいる方はまずは相談するべきです。詳しくは以下の記事をご覧ください。
●絶対に知っておいてほしい上司のパワハラに対処するために正しい方法
●セクハラに正しく対処するために必要な4つの手続き
この記事の目次
1. 対人関係が苦手と感じる理由
1-1. 過去の対人関係のトラウマ
対人関係が苦手と感じる理由のひとつとしては、自分ではなかなか対処が難しいものに、子供の頃の辛い体験があります。
子供の頃に仲間はずれにされた経験があったり、いじめや虐待を受けた経験がある場合、心的外傷(トラウマ)となってその後の対人関係にも奥手になったり、集団や組織に対して恐怖心を抱くことがあります。
人は極度のストレスを伴う経験をすると、ストレスホルモンであるアドレナリンが過剰に分泌され、記憶に強い影響を与えるので、大人になっても子供の頃の辛かった人間関係への思いを忘れることができないのです。
自分の意見を主張し過ぎたり、逆にまったく主張できないことで、友達とのコミュニケーションがうまくいかずにトラブルになった経験なども、対人関係を苦手と感じる要因になっている可能性があるでしょう。
1-2. 自分の価値観に固執している
過去の体験とは別に、「現在の自分の価値観に固執するあまり」対人関係が苦手と感じるケースもあります。
例えば、次のケースを想像してみてください。
しかし一方で、同じチームのメンバーの中には、業務時間とプライベートのメリハリをはっきりとさせることにこだわりを持っている社員もいます。
こうした場合、目標を達成するためには残業することも、休日出勤することすら厭わないあなたから見ると、まったく目標に届いていない状況にも関わらず、定時になったらすぐに帰宅の支度を始める相手が理解できないでしょう。
すると、自然と日々のコミュニケーションの中にも相手に対する嫌悪感が影響していき、関係がどんどん悪い方向へと進んでいくのです。
自分を嫌っている相手のことを嫌うようになるのもまた自然な反応です。互いに自分の価値観を優先し、相手の価値観や言動を否定するようになっていきます。
自分の価値観の固執し過ぎる人ほどこういった傾向が強くなるのです。
そうなるとチーム内の雰囲気も悪くなりますし、その原因を作っている人に対する風当たりも厳しくなるでしょう。
どういった環境でも同じことが発生するのであれば、自分は良好な対人関係を築くことが苦手だと感じるようになっていくのです。
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2.対人関係の悩みを克服する方法
対人関係で悩んでいる場合、状況によって対処法は大きく変わってきます。
あなたに合った方法を見つけるようにしてみてください。
2-1.過去のトラウマに苦しんでいる場合は心理カウンセリングを受ける
まず、過去のトラウマに苦しんでいる場合は、自分の力だけで解決することは困難です。
こうした場合、小手先の方法をやったり周りに相談しても解決策は見つかりません。
心理カウンセリングを受けることをおすすめします。
カウンセラーに相談することであなたの話をしっかりと受け止めてくれるだけでなく、言葉にすることで何が大きな問題なのか自分で気づくこともできるようになります。
過去の経験を振り返りながら、「どうしようもない状況の中で自分はよく頑張った」と、自己肯定を増やしていき、心的外傷を少しずつ癒していくのです。
これにはプロのカウンセラーの協力が必要になります。
2-2.まずは対人関係に悩む理由を明確にする
トラウマやセクハラ、パワハラといった理由以外で対人関係に悩んでいるのであれば、自分の力で改善していくことは充分に可能です(セクハラ・パワハラの場合は周りに相談すべきです)。
どう対処していけばいいのかを考えていくためにまずは
- 誰との対人関係に悩んでいるのか
- 相手の何が苦手なのか
といった理由を明確にしていきます。
例えば、あなたにはとても厳しい上司がいて、職場でもよく叱られているとします。
後輩の前でも叱られるので、プライドはズタズタです。失敗を怖れるあまりに委縮して仕事をしていて、日増しに抱えるストレスが大きくなっているとしましょう。
そうすると、以下のように整理することができるでしょう。
- 直属の上司であるI主任。
- いつも社員の前で叱られる。
- 視線が常に冷たい。
- ノルマの達成に向けた話ばかりでやる気が起きない。
- 自分のことを嫌っている。
このように、「誰の」「何が」苦手なのかを明確にすることが改善のための一歩となります。
そして、対人関係において大切なのは、相手に変わってほしいと願っても変わることはない、ということです。
状況を改善するためには、あなたが変わるしかありません。
これは妥協しろとか、我慢しろという話ではありません。
「自分の価値観に捉われ過ぎずに、相手を理解する」といった努力や工夫が必要だということです。
それでは次から具体的な方法について見ていきましょう。
2-3.リフレーミングによって視点を変える
最初に紹介する方法が「リフレーミング」というものです。
リフレーミングとは、フレームを変える、つまり現状について視点を変えて見てみるという方法です。
例えば、あなたが仕事後に「疲れた〜」と思ったとしましょう。
それを「今日も頑張った!」と思うことにしたらどうでしょう?
きっと気持ちがポジティブになり、爽快な感情が生まれるはずです。
起こっていることは同じでも解釈を変えることで、思考に大きく影響を与えます。それは結果的に行動にもつながってくるのです。
それがリフレーミングの効果です。
対人関係に悩んでいる場合は、次のように相手の言動について視点を変えて見つめてみるのです。
- いつも社員の前で叱られる。→自分だけではなく実は他の人も叱られていて、それが社員のケーススタディーになっている。
- 視線が常に冷たい。→常に真剣に取り組んでいて、そう見えてしまう。
- ノルマの達成に向けた話ばかりでやる気が起きない。→ノルマの達成に対する意識が高い。責任感がある。
- 自分のことを嫌っている。→試練を与え成長させようとしている。
対人関係の悩みは実は単なる思い込みであることも多いものです。
リフレーミングをすることで、自分の価値観に捉われ過ぎずに相手と向き合うことができるのです。
リフレーミングについては以下の記事でも詳しく解説しています。
リフレーミングを使ってあなたの人生をもっとポジティブにする方法
2-4.ポジションチェンジで相手の立場に立ってみる
自分が対人関係で辛い目にあっていると、つい「なんで自分がこんな目に!」と思ってしまいがちですよね。
しかし、それは自分の立場からしか考えられていない可能性があります。
ここで紹介したい方法が、相手の立場に立って考えてみる「ポジションチェンジ」というものです。
ポジションチェンジとは、その名の通り、ポジション(立場)を変えて現状を見つめ直すというものです。
例えば、円柱を横から見ると長方形に見えますが、上から見ると丸(円)に見えますよね。
このように見方によって、同じ状況(物)であっても見え方が違うのです。
対人関係においてこのように立場を変えて考えることができると多くのことに気づきます。
ポジションチェンジは、自分、相手、第三者という三つのポジションから考えてみる方法が一般的ですが、自分と相手だけのケースを考えてみても非常に効果的です。
やり方としては、事前に以下の画像のように二つの椅子を用意し、「自分」と関係を改善したい「相手」に分けます。
そして、紙を用意しましょう。
まずは自分の椅子に座り、「自分の立場」から相手に伝えたいことを書きます。
- もっと優しく接してほしい。
- ノルマの話ばかりしないでほしい。
- 注意が細かすぎる。
このように思ったことを紙に書き留めていきます。
次に相手の椅子に座り、書かれた内容を読み、「相手の立場」から、どう感じるか、何か伝えたいことがないかを書きます。
そうすると、次のような言葉が出てくるかもしれません。
- 優しくしていたのでは伸びない。自分は嫌われても、相手の成長のためには指摘するべき部分は指摘した方が良い。
- もっと目的意識を強くもって、自主的に行動できるビジネスパーソンになってほしい。
- お客様のことを考えたら細かい部分でもミスはいけない。今のうちい小さなミスに気づくようにしてほしい。
ポジションチェンジはリフレーミングと同様に、自分の一方的な思い込みだった可能性に気づくために効果的です。
「なんで自分が」「自分ばっかり」と自分にベクトルが向いてしまっていると、相手の気持ちを理解することは決してできません。
そして、どんどん自分を追い込んでしまい、悪化してしまう悪循環に陥ってしまいます。
ポジションチェンジは、いつもは見えなかった相手の愛情や真意に気付くことができるようになるのです。
2-5.相手の価値観を具体的に知る
リフレ―ミングもポジションチェンジも、あくまでも別の「可能性」があるということを知る機会です。
実際にどのような価値観を持っているのかは、本人に確認しなければわかりません。
もしかすると自分のためにそのような言動をとっているかもしれないのですから、ここは苦手な相手であっても、コミュニケーションをとって確認してみましょう。
実際にリフレ―ミングやポジションチェンジで得た視点や考え方が当てはまる可能性があります。
なかなか相手の価値観を知る質問をすることは難しいので、ここでは仕事への価値観を引き出す質問をご紹介します。
- 仕事をするうえで、もっともこだわっていることは何なのか?
- この仕事にとって一番大事にすべき点は何なのか?
シンプルですが、これらの質問をすることで相手の価値観を知ることができます。
逆にこれ以外について根掘り葉掘り聞くことはあまりよくありません。
上記の質問をすることで、「厳しい課題にも自分で乗り越えられる人材を育成していきたい。」「とことんまで顧客満足を追求していくことが大事。」といった答えを得られるかもしれません。
それにより相手を理解することができ、さらなる関係の改善に繋げることができるはずです。
2-6.好意をもたれる接し方をする
ここまでお伝えした内容を実践することで相手への理解が深まり、自分の一方的な思い込みが解消されるでしょう。
そうしたら、次は関係改善に向けて積極的に動くことです。
先述のとおり、相手を変えることは難しいので、自分の言動を変えていくことが重要になります。
ぜひともやっていただきたいのは、好意をもたれる接し方をすることです。
その方法の一つとして、相手より先にしっかりと挨拶をするというものがあります。
ただ単に挨拶をするのではなく、「相手の目を見る」ということ、「笑顔で挨拶をする」ということが大切です。
「いまさら笑顔?」と思われた方もいるかもしれませんね。
しかし、あなたが相手から笑顔で話しかけられたらどう思いますか?
笑顔で接されて嫌な気持ちになる人はいないでしょう。
実際に、スウェーデンのウプサラ大学の研究で、笑顔は伝染するものであり、笑顔の人を見ながら厳しい表情をするのは難しいという結果が出ています。
人間関係において笑顔がもたらす効果は明らかです。
「I主任、おはようございます」と、朝一から元気よく挨拶してみてください。
そしてもう一つ、「相手を承認する」ということも効果的です。
アメリカの心理学者であるマズローが唱えた「五段階欲求」は有名ですが、その中で人は「認められたい」という欲求があることがわかります。
とはいえ、わざとらしく「すごいですね!」などと承認しても嫌味に感じる可能性があるので逆効果です。
ここでは、しっかりと感謝の気持ちを伝えるということを徹底しましょう。
先輩や上司だけでなく、同僚や後輩であっても、褒めることや労うことは人間関係において大切になります。
そして、笑顔でいることも、笑顔は伝染すると言われるので、あなたが相手に笑顔を贈ることで、相手が承認された気持ちにさせることができます。
2-7.傾聴によってラポールを構築する
信頼関係を築くことを「ラポール」(橋を架ける)と言います。
どれだけテクニックで相手の関係をしようとしても、このラポールが築けていなければ良い関係を築くことは難しいでしょう。
ラポールを構築する方法はいろいろありますが、相手の話を全身で聴いて、受け止めるという「傾聴」が非常に重要です。
「聞く」ではなく「聴く」となっているところに注目していただきたいのですが、これは単に相手の話を聞いているのではありません。
耳だけではなく、頷きながら、時には相槌をうって、「あなたの話をしっかりと聴いています」という姿勢を見せるのです。
挨拶することや、感謝の気持ちを伝えることと同様に、相手の話をしっかりと聴くということを大切にしてください。
自分の話を受けとめてくれる相手に対しては、親しみを抱き、さらに本音で話をするようになります。こうして少しずつラポールが構築されていくのです。
ラポール形成については以下の記事もあわせてご覧ください。
ラポールとはコミュニケーションを行う上で最も基本かつ重要なことである
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まとめ
どんなに苦手であっても、同じ職場で働いている限り、付き合っていくことになります。
険悪なムードで働くよりも、お互いに理解し、信頼し合える関係であれば、仕事もしやすく、成果も出しやすくなるでしょう。
そのためには相手を変えようと考えず、まずは自分の視点や接し方を変えていくことです。
自分の価値観だけに捉われ過ぎず、ぜひ相手の価値観も理解し、尊重できるようになることで、人間関係は大きく改善されます。
そして対人関係の悩みも軽減していくことができるのです。