厚生労働省の統計によると、「仕事が辛い」と感じながら働いている労働者の数はなんと全体の6割近くにのぼっています。
もちろん仕事をしていれば誰でもストレスは感じるものですが、仕事が辛いと感じている状態が続き、体調に異変が生じるようであれば危険信号であり、今すぐ対処すべきです。
とはいえ、勢いで退職するのは懸命ではありません。
ここでは「転職する」「休職・退職する」といった方法ではなく、あなたの努力によって改善できる方法について紹介します。
※明らかなパワハラ・セクハラをされている場合、精神に異常をきたしている場合はすぐに専門の機関に相談するようにしてください。
この記事の目次
1. 仕事が辛いときの「限界サイン」を見逃さない
1-1. 睡眠や食欲に影響が出る
仕事のストレスが限界まで達すると、
- まったく何をしても楽しくない
- 何もやる気が起きない
という抑うつ状態になります。
さらに状況が悪化し追い込まれると自殺する人も出てきます。
そのため、まずは限界を告げる心のサインに気づくことが大切です。
「夜眠れない」というのはその典型です。
強いストレスのためにネガティブなことばかりを考えるようになってしまい、良質な睡眠がとれなくなってしまいます。
そうなると疲れも蓄積していくので、さらにストレスの負荷は大きくなってしまいます。
眠れずネットサーフィンなどをして就寝時間が遅くなっていったり、毎日深酒をするようになってもやはり疲れは蓄積していく一方です。
また、「食欲がない」というのも限界サインのひとつです。
このように仕事が辛くて限界に達してくると、生活習慣の乱れとして現れます。
1-2. 体調の変化
生活習慣が乱れていても、その状況を放置して働き続けると、今度は体調の異変としてはっきりと現れてきます。
疲労が回復できず「だるい」という状態が慢性的になります。その他にも「頭痛」や「めまい」、「腹痛」、極度の「肩こり」などの症状が見られます。
中には原因不明の「発疹」や「かゆみ」といった症状のケースもあります。
中には栄養ドリンクを飲んだり、頭痛薬や腹痛薬を飲んで対処している人もいるかもしれませんね。
しかし、根本的な原因を解決しない限り、症状はますます悪化していきます。
そしてあるとき、プツンと糸が切れたようにまったくやる気の起きない「うつ状態」に進行するのです。
ここまでくるともはや働ける状態ではなくなってしまいます。
そのため、生活習慣の乱れや、体調の異変の段階で気づいてすぐに対処していくことが重要です。
他にもこちらのサイトではストレス状態を詳しくチェックできますので、もっと知りたい方は参考にしてみてもよいでしょう。
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2. 仕事が辛いと思う「原因」を明確にしよう
対策を取るためには「原因」を明確にしなければなりません。ここでは一般的に考えられる原因について紹介しますので、当てはまるものがないか見てみてください。
2-1.自分の能力と仕事量に問題がある
平成30年の厚生労働省の労働安全衛生調査によると、全体の58%の労働者が強いストレスを感じていると答えており、その原因の第一位が59.4%で「仕事の量や質」となっています。
仕事の量や質が原因となる項目は以下のようなものがあります。
・やるべき仕事量が多すぎて、追いつかない
・仕事にもっと高いクオリティーを要求される
・残業ができない分、自宅に持ち帰って仕事をしなければならない
・実現できないような営業ノルマを課せられる
当てはまる項目はあったでしょうか?
経験を積むことでスキルアップはしていくものの、現実的に厳しい仕事量を課せられているのであれば時間が経過しても問題は解決しません。
2-2.仕事での失敗
また、同調査では、強いストレスを感じる原因の第二位が34%で「仕事での失敗や責任の発生」という結果になっています。
仕事での失敗に関する項目としては以下のものがあります。
・出勤時間の遅刻や納品期限を守れないといった時間的な要素。
・成果を出せずに目標ノルマを達成できなかった。
失敗の具体例は千差万別ですが、「失敗=恥」「失敗=無能」「失敗=叱られる」という繋がりもあり、強いストレスを生んでいるのかもしれません。
成果が出せなければ給与にも直接反映していきます。そういった焦りもまたストレス増加に影響していきます。
2-3.上司や同僚との人間関係の問題
強いストレスを感じる原因の第三位は31.3%で「対人関係」です。平成29年の調査よりも増加しており、仕事での失敗とほぼ並んできています。
対人関係の問題に関する項目としては以下のようなものがあります。
・異性からのセクハラ
・部下や後輩社員への指導が上手くいかずにトラブルになる
・陰口を叩かれたり、嫌がらせを受けている
・いくら頑張っても組織に評価してもらえていない
いかがでしょうか?
自分が我慢さえしていれば仕事は続けていけるという思いがあるので、どうしてもこの状況を放置しがちです。
しかしそうするとストレスは知らず知らずのうちに蓄積され、やがて限界に到達してしまいます。
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3. 仕事が辛いときの対処方法
あなたが「仕事が辛い」と感じる原因は明確になりましたか?次はその対処法をみていきましょう。
3-1.アサーションによる解決
自分の能力や仕事量が与えられるものに対して大きな差がある場合、当然のように進捗状況は滞り、「自分は無能だ」「自分がいくら頑張っても完了させることはできない」という無力感に襲われるようになります。
「自分の能力と仕事量の問題」でストレスを感じている場合、今の自分の力量に見合った仕事の質と量なのかを見直すべきです。
そうすると、会社や上司に対して理解を求めていく必要があるでしょう。
そこで問題となるのが、「どうやって要望を伝えるか?」ということです。
仮に自分の中だけで勝手に解決して仕事量を調整しても、上司から厳しく指摘されたりして状況が悪化するだけになる可能性もあります。
そこで重要なことが「自己主張」です。
これは行動療法では「アサーション」(assertion)と呼ばれているもので、抑圧された環境で精神的な問題が生じている人を回復させる方法です。
ただし、一方的に自分の主張(攻撃的主張)だけをするのでは、やはり相手との人間関係を損ねてしまいます。
ですので、相手の立場や考え方を尊重しつつ、自分の意見を述べるという「アサーティブ」な主張が重要になってきます。
忙しすぎてもう無理です。仕事の量を減らしてください。
◎ アサーティブな主張の例
私はこの分野に長けているので、なんとか調整していただき、こちらの仕事を削って、こちらに集中させていただけるとより成果を出すことができます。
バランスの良いアサーティブな主張をするためには、別の視点から見る力や相手を尊重しながら主張するコミュニケーションスキルが必要になってきます。
これらを鍛えるにはアサーティブコミュニケーションについて書籍やネットで学び実践していただくか、後述するコーチングを受けることも効果的です。
3-2.プラスのストロークを多くする
上司や同僚との人間関係でストレスを感じている場合、対処法は大きく2つに分けられます。
パワハラやセクハラを受けている場合は自分の力で解決することは難しいです。
会社の人事部や労働局に相談し、然るべき対応を進めていきましょう。
一方、上司や同僚、部下との人間関係が上手くいかずにストレスを感じている場合は自分の力でも変えることができます。
ポイントは「他人は変えられないが、自分は変えられる」という認識を持つことです。
人はつい「上司が変わればいいのに」「なんであの人はわかってくれないんだろう?」というように他人を変えようとします。
しかし、いくら願っても他人は変えられず、そう思うほど自分が苦しくなるだけです。
円滑な人間関係を築くためには、相手の存在価値を承認することが効果的で、このような承認する言動を「ストローク」(stroke)と呼びます。
具体的には以下のようなプラスのストロークを継続していくことで、他人にポジティブな影響を与えることができ、それが信頼関係の構築に繋がり、人間関係は改善されていきます。
・相手の頑張りを見つけて労う、または励ます
・笑顔で相手に話しかける
・相手の話を、心を込めてうなずきながら聴く
繰り返しになりますが、重要なことは他人を変えようとするのではなく、まず自分が変わることです。
ちなみに逆にマイナスのストロークを継続していくと人間関係は悪化していきますので注意してください。
3-3.コーチングやカウンセリングを受ける
アサーティブな主張にせよ、プラスのストロークにせよ、根本にあるのは、自分のことばかり考えるのではなく、「相手を認める」言動を実践することです。
しかし、「どうすればそれが身につくのでしょうか?」と疑問に思うかもしれませんね。
もちろん毎日練習することによって身につく場合もありますが、一番の近道はまずは自分が受け止めてもらえる喜びや、承認される嬉しさを感じてみるのが良いでしょう。
その一つとして、「コーチングを受ける」という方法があります。
コーチングとは、質問や傾聴を行うことでクライアントの目標達成や自己実現の手段として使われます。
コーチングは、コーチが実際にクライアントに対して、そのようなコミュニケーションを実践するため、そのような言動を体感することができます。 (余談ですが、部下と良いコミュニケーションをしたいと考えコーチングを受け、体感する人も多いです)
また仕事の失敗や成果を出せないことへのストレスについても、コーチングを受けることで軽減させることも可能です。
もちろん、コーチがストレスを取り除くことはできませんが、たとえば
「あなたが目指すべき目標は何なのか」
「そのために何をしなければならないのか」
「何を変えなければいけないのか」
といったことが、コーチングを受けることで明確になり、行動につなげることができます。
もしひどい抑うつ状態に陥っていて何もやる気がでない、体調も優れないということであればコーチングではなくカウンセリングを受けるべきです。
もはや目標を持つ気力すら失っているかもしれません。
カウンセリングはコーチングとは異なり、症状を改善することに専念します。
コーチングについては、コーチングとは何か【図解付き】でわかりやすく解説で非常に詳しく説明していますので、興味がある方はぜひご覧ください。
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まとめ
強いストレスを感じるから会社を辞めて環境を変えようとすぐに決断する必要はありません。
その前にできることがあります。そのままの仕事を続けながらでも、ストレスを大きく軽減することはできるのです。
ぜひ独りで悩まずに、コーチやカウンセラーに相談するなど、周囲にも頼りつつ改善していきましょう。