
離職率が高い会社は、コスト面の負担増やさらなる離職の増加など悪循環に陥ってしまう傾向にあります。
「辞める社員が悪い」と考えてしまう経営者や人事担当者も多いですが、組織自体に問題が多いケースがほとんどです。
この記事では、離職率が高い会社の特徴、そして、社員と定着されるための取り組みについて紹介していきます。
この記事の目次
業種別の離職率について
厚生労働省のデータを見てみると、業種別で早期離職率のワースト3は以下の通りとなります。(その他は除きます)
- 宿泊業・飲食サービス業(49.7%)
- 教育・学習支援業(46.2%)
- 生活関連サービス業・娯楽業(45.0%)
これらを見てみると、対お客様向けの業種において離職率が高くなる傾向にあることがわかります。
お客様相手の仕事となると、どうしても土日休みなどが取りづらいことや、勤務時間も長くなったり夜勤が発生したりすることなどから、離職率も高くなっていると考えられます。
しかし、これら以外の業種や原因であっても、人間関係や教育の問題などによって離職率は高くなるので参考程度に見ていただいたほうが良いでしょう。
離職率が高くなると起こる問題
離職率が高くなることで起こる問題として、下記の3点が挙げられます。
1)慢性的な人手不足
2)現場のオペレーションの弊害
3)採用費・教育費などの費用負担の増加
それぞれについて詳細を見ていきましょう。
1)慢性的な人手不足に陥る
離職率が高い企業の問題点として一番大きいものは、慢性的な人手不足が発生しているということです。入社しても早い段階で人がどんどん辞めていくため、常に人手不足の状態です。
そのため、1人当たりに掛かる負荷も大きくなり、そのことが既存スタッフの離職の原因になるという、負のスパイラルが起きてしまっています。
2)現場のオペレーションに限界が発生する
離職率が高い企業は、人の入れ替わりが激しく、中堅社員は常に誰かを教育している状況が発生しています。
人が居ないため、すぐに戦力になってもらう必要があり、そのために管理者層や中堅社員が教育を担うことが多くなっています。
ただでさえ、人が居ない状態にプラスして、「教育」という重要度の高い仕事がプラスされます。そのため、管理者しかできない仕事も後回しになったり、中堅社員は自分の仕事が後回しになったりします。
その分を残業や持ち帰りの仕事として処理する必要があり、明らかにオーバーワークになっていきます。それにより連鎖的に、管理者や中堅社員まで離職してしまうということが起きてしまいます。
3)採用費・教育費などの費用負担の増加
離職者が多くなることで、新卒・中途共に、常に人を採用し続ける必要があります。新卒・中途採用の採用の1人当たりのコストとしては、下記のような費用となります・
【新卒採用】
従業員数 | 新卒採用単価 |
300人未満 | 65.2万円 |
300~999人 | 80.2万円 |
1000~4999人 | 72.9万円 |
5000人以上 | 59.9万円 |
【中途採用】
従業員数 | 中途採用単価 |
300人未満 | 63.6万円 |
300~999人 | 83.0万円 |
1000~4999人 | 108.5万円 |
5000人以上 | 78.5.万円 |
社員を1名採用すると、上記のような採用費が掛かります。これ以外にも下記の費用なども発生します。
- ・研修・教育費
- ・毎月の給与
- ・住宅手当などの福利厚生費
- ・社会保険料の会社負担分
- ・業務に使用する機器のリース代など
- ・退職金の積み立て給料や社会保険料、福利厚生費 など
給料が20万円の社員を採用しても、1年間400万円以上のコストが掛かると言われています。
また、一般的に入社後3年位は戦力にならないと言われていますので、早期離職の場合は、これらの費用が無駄になってしまうということを理解する必要があります。
400万円の経費を捻出するため、企業は商品・製品をどれだけ販売・提供する必要があるのでしょうか?
早期離職は、企業にとっては大問題なのです。
離職率が高い会社の5つの理由
離職率が高い会社の理由として、下記の5点が挙げられます。
1)社員が求めている環境とのギャップが大きい
2)職場環境の整備ができていない
3)教育体制ができていない
4)人間関係がうまくいっていない
5)評価制度などの整備ができていない
それぞれ以下で詳しく解説します。
1)社員が求めている環境とのギャップが大きい
社員がどのような働き方を求めているか?その状況をしっかりと理解する必要があります。
安定している、自分のやりたい仕事ができるというものに加え、休日・休暇の多い会社、勤務制度、住宅など福利厚生の良い会社というように、ワークライフバランスの取れる会社を希望する傾向が強くなっています。
そのため、休日出勤、残業、夜勤、長時間勤務というものは、どうしても敬遠される傾向にあります。
2)職場環境の整備ができていない
最近は、「ワークライフバランスが取れるかどうか?」という視点は非常に重要視されています。
こうした状況において例えば、育児休暇制度が整備されていない、有給休暇も取得できない、福利厚生もほとんどないという状況では、仕事とプライベートの両立はほとんどできません。
やりがいを持って入社したとしても、プライベートも充実できない環境では、離職の大きな要因となってしまいます。
3)教育体制ができていない
中小企業の場合、新入社員の教育体制ができていないケースが多く見受けられます。
教育体制のできていない場合、ほとんどの場合がOJTによる教育がほとんどです。
ある日突然、新入社員が入社するため教育担当と言われ、教育環境も整わないまま、つきっきりで仕事を教えることになります。
しかし、人手不足の状況は変わっていないため、教育時間を捻出するため、他の社員の負荷が多くなるか、教育担当者が残業などをして乗り越えることになります。
これでは現場の負荷が大きくなるため、ここから新たな退職者が生まれる原因になります。
4)人間関係がうまくいっていない
離職の大きな要因に、人間関係の問題によるケースは非常に多いです。
人は余裕が無いと、自分のことだけで精一杯になり、細かな気配りや思いやりが失われていきます。
その結果、ミスなどが多発し、そのことで叱責されたりすれば、自分のこととして捉える以外にも、自尊心を保つために、人のせいにしたり、誰かの悪口などにもつながっていきます。
これにより、職場の人間関係は最悪なものとなり、精神的な疾患につながったり、離職の大きな要因になります。
5)評価制度などの整備ができていない
自分が努力したことで会社にプラスをもたらしたり、お客様に喜ばれたりするために一生懸命に努力したにも関わらず、褒められることもなく、昇進や給料・賞与のアップなどに全くつながらないと、人はやる気を失います。
自分の努力した成果に対して、何の報酬も無ければ、どんどんやる気を失い、努力しなくなり、仕事に対するやりがいを失うことになってしまいます。
また、経営者や上司の好き嫌いで、評価が決まってしまう場合なども、やる気を失う原因になります。仕事に対して、誰もが平等に評価される制度が無いことが離職につながってしまいます。
離職率低下のための解決方法
離職の原因は上記のように様々です。そのため、離職率を下げるためには、下記の5点の解決方法を考える必要があります。
1)現在の求職者が求めているものを知る
2)職場環境を整える
3)教育体制の整備
4)社内研修などの実施
5)評価制度の整備
詳しく解説していきます。
1)現在の求職者が求めているものを知る
社員があなたの会社に何を求めて入社したかを知る必要があります。
【就職先を確定する際に決め手になった項目】
これらの内容を見て、新入社員を採用する際に、自社の環境を見つめ直す必要があります。
入社前には知名度や自社のアピールによって、選択肢の少ない学生などを採用することができるかもしれません。
しかし、実際に働き出してから社会人としての知識が増え、友人などと比較できる状態になった場合に、現実とのギャップを知り、現状の不満や不安が改善されないと感じた場合には離職に直結することになります。
2)職場環境を整える
就職先を確定する際の決め手にもあるように、職場環境に対しての要望は年々高まっています。
特に福利厚生制度については、「社員を大切に考えている」「長く働けそうな会社だと感じる」と言ったように、早期離職を防ぐためにも必須項目となっています。
また、女性の場合は、勤務地の問題や、フレックス制度やテレワーク、在宅勤務などの充実が長く働くためには必要な職場環境となっています。
せっかく、戦力化した社員を活かすためにも、今後は積極的に導入が必要となります。
3)教育体制の整備
教育体制については、社員を採用した際にしっかりと計画性を持って育成するためにも非常に重要になります。
欠員が出て社員が入社する度に、現場の誰かがOJTによって教育するのではなく、教育マニュアルを整備することで、現場の負担も軽減され教える人によるレベル差も解消することができます。
最近では、動画によるマニュアルなども増え、より実際の仕事に近い状態をマニュアルで学ぶことも可能になっています。
4)社内研修などの実施
教育体制を整備するということは、入社時だけのことではありません。
入社後のスキルアップのため、2年目研修やメンター研修、更には、中堅社員研修やマネジメント研修、リーダーシップ研修なども必要になってきます。
また、最近ではメンタルヘルスやコミュニケーション研修など、ストレス対策や人間関係の構築に関する研修なども必要になっています。
さらに、社内研修だけでなく、外部研修への参加や、社員の資格取得のサポートを行うなど、社員のスキルアップのサポートが必要になっています。
5)評価制度の整備
自分が努力したことで会社にプラスをもたらしたり、お客様に喜ばれたりするために一生懸命に努力したにも関わらず、褒められることもなく、昇進や給料・賞与のアップなどに全くつながらないと、離職につながるということを述べました。
そのため、それらを解消するために評価制度を導入する必要があります。
評価制度の導入に際して、「何の目的で」評価制度を導入するかを明確にする必要があります。具体的には評価制度を以下のように活用することができます。
- 処遇面に活用・・・給与、賞与、昇進の決定
- 育成面に活用・・・自分自身の目標設定、課題の明確化、人材育成に活用
- 所属面に活用・・・それぞれの人材の評価と、その能力に合わせた人事異動や配置転換を実施
注意点としては、営業や販売など、目標達成がわかりやすい職務の場合はいいのですが、経理・庶務などの事務職の場合は、目標達成が非常に見えづらく、曖昧になってしまいます。
そのため、1人の上司が評価を行うのではなく、1人の対象者に対して複数の人が評価を行う360度評価などの導入などを行ない、評価に対する公平性を持つことも非常に重要になります。
これら以外に離職を防ぐ方法については離職防止のためにやるべき取り組みと具体的な3つの事例を紹介で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
早めの環境整備で離職を防止しましょう
このように、せっかく採用した人材が、早期に離職してしまうことで、企業にとって大きなマイナスが発生することになります。
ここに記載した内容を参考に、自社の状況を振り返っていただき、1人でも多くの社員が長く働くことのできる環境を整えていただきたいと考えます。