
個人一人ひとりの成長が組織の成長や発展へとつながるため、人材育成は組織にとって必要不可欠なものです。
しかし若手層と中間層、シニア層では求められる要素も異なり、大事になるものも変わってきます。
そこで今回はすべての人に共通するポイントに加えて、各階層において大事なことについてもお伝えしていきます。
この記事の目次
1.共通する人材育成のポイント
1-1. 適切な褒め方と叱り方を知る
まず大切なことの1つ目は、適切な褒め方と叱り方です。
部下や後輩が失敗したとき、どのように叱っていますか?人前でりつけると、他の従業員への見せしめのようになり、落ち込みの原因になります。
部下に同じ過ちを繰り返させず、行動を改めさせたいのならば、別室で叱り、一緒に原因と対策を考える姿勢が欠かせません。
また、褒める行為に対しても、褒め方が悪いと本人は喜びを感じられず、モチベーションアップに役立ちません。
あなたはどのような褒められ方をしたときに嬉しさを感じるのでしょうか。
おそらく結果を単に褒められるだけでなく、プロセスを踏まえて褒められたり、個別ではなく全体の前で称えてもらえたときなのではないでしょうか。
自分がされた時を想定して、適切な褒め方を実施することはとても大事ことです。
1-2. 性格に合わせた関わり方をする
全体に共通する大事なポイントの2つ目は「性格に合わせた関わり方」をすることです。
会社内には真面目で責任感の強い人もいれば、ムードメーカーで盛り上げ役の人もいます。集中力がある人もいれば、営業力がある人もいます。
一人ひとりの長所や短所、魅力や弱点なども異なります。それにもかかわらず、単一の指導をしたのでは、十分なパフォーマンスを発揮することは期待できません。
一人ひとりの個性や性格を踏まえて、指導方法やかかわり方を工夫しましょう。特定の部下に効果が出た方法がすべての部下や後輩に効果が出るわけではありません。
マニュアルにとらわれ過ぎることなく、状況を見ながらフォローをしたり、かかわり方を柔軟に行うことも人材育成においては大事なことになります。
それでは、以下では階層ごとに人材育成について重要なことをお伝えしていきます。
2.新人・若手の場合
2-1.メンタルヘルスの調整
新人や若手層においての大事なポイントは「メンタルヘルスの調整」です。
社会人になりたての頃を思い出していただきたいのですが、学生時代と社会人なり立て~最初の数年間はわからないことだらけで、戸惑いも多かったのではないでしょうか。
仕事そのものだけでなく、ビジネスマナーや対人関係など、社会人経験・人生経験の浅さから、衝突やトラブルも多くなり、自信喪失にもつながりやすい頃合いです。
だからこそ仕事に関して教えるだけなく、新人や若手に関しては落ち込んでいるときには相談の乗ってあげたり、相談やフォローできる人を用意したりなど、メンタルヘルスの不調をきたす前の準備や処置が大事です。
同時に「2週間以上憂うつな症状が出ている」「自分なんてダメ人間だとの思考から抜けられない」などのうつ症状が出たときに、自ら異変に気づけるように知識を与えておくことも必要になります。
若いころに必要な知識を与えておくことで、中間層やシニア層になって慢性化しした不調となって出るのを防ぐ役割もあります。
3.中間管理職の場合
3-1.怒ると叱るの区分けと実践
30代や40代になると、部下を持つことも多くなります。
自分なら言わないでもわかることなのに部下にはわからなかったり、何度も手間を取らせる様子に、感情的に起こる方も少なくありません。
しかし、中間層や中間管理職になったのならば、叱ると怒るの違いをきちんと理解することが必要になります。
叱るは間違いに対して注意や指導をすることを指しますが、怒りは感情に任せてとる行為です。
部下や後輩が育つのはどちらでしょうか?
言わぬもがなで、仕事においては「叱る」を選択することが大事です。
怒る行為は感情的な行為に過ぎないので、部下が萎縮したり、表面的なコミュニケーションをとってトラブルを回避したりなど、組織全体においてもマイナスに機能しかねません。
部下を持つ世代になったのなら、「怒ると叱る」の適切な分け方と実践を身に着けましょう。
3-2.リーダーシップ
また、中間層や中間管理職においてもう1つ重要なことがリーダーシップです。
リーダーシップとは、部下の手本となり、リーダーとして背中を見せることでもあり、同時に適切に仕事を割り振ったり、チームを鼓舞したりする力でもあります。
与えられた仕事を行うだけではリーダーとしては不十分です。自らがどのようなリーダーでありたいのか、そのために必要なことは何かを随時考えて行動することが求められます。
上司からの任務や指示がある一方で、部下に対しても指示や任務などを与える立ち位置は迷うこともあると思います。
しかし、どのようなリーダーでありたいのかを考えて行動に移させることで、ブレない指導や安定的なかかわり方にも通じます。
一貫性のあるかかわり方ができるように、自らの在り方や理想を今一度考えて行動に移すことも必要なことでもあります。
4.管理職・シニア層の場合
4-1.アサーティブコミュニケーション
40代、50代になると、課長や部長などの役職者になる方も多いです。
社内全体を見渡して、相対的に対話者に年下が多くなり、頼られたり、指示を仰がられたりするケースも増えてきます。それだけ培ってきた経験や知識が大きいということでもあります。
しかし、20代の若手とは価値観の違いや明らかな知識・技能の差がつき、心理的な距離感が大きくとられてしまうことも少なくありません。
だからこそ、若手が話しやすいようにアサーティブコミュニケーションがとれるように心がけたいところです。
一方通行のコミュニケーションは、ときに攻撃的に映ったり、高圧的に見られたりもします。特に役職や寡黙さなどが加われば、なおさらでしょう。
あえて自ら歩み寄る姿勢として、若手やスキルの拙い相手であっても、基本的な人権を重んじて、尊重する態度を取ることで相手も話しかけやすくなり、距離感も近づきます。
若手の方が近づくべきとの考えもあるものですが、若さゆえの知識不足やコミュニケーションの拙さもあるからこそ、経験豊富なシニア層が率先して歩み寄り、手本となる良好なコミュニケーションを実践することも大切なことです。
4-2.「教える人を教える」スキルとかかわり方
また、管理職やシニア層になると、部下が部下を持つことも増えてきます。
後継者の育成の世代でもあります。
部下も次長や課長になると、「部下が動いてくれない」「部下とうまくコミュニケーションが取れない」などの悩みを抱えていることも増えますが、板挟みの立ち位置で相談しづらく、葛藤しながら仕事をこなす方も少なくありません。
かつての自分と重なることがあるのなら、部下の不器用な指導法やかかわり方を否定することなく、自らの失敗談や過去の悩みを教えてあげることです。
うまくいった経験を話すのも悪くはありませんが、内心は不安や葛藤を抱きつつ日々奮闘していることを察して、あえて自らのうまくいかなかった経験を語り、自信をつけさせてあげることも部下の育成に役立ちます。
部下が社内で活躍できるように教える人を教えるスキルやかかわり方を伝えていくことで、会社での自分の使命や役割への自信を改めて感じることもでき、それがセカンドライフにもプラスに働くことも多いとされています。
会社人生の晩期だからこそ、継承や後継者の育成などの役割を担い、定年後にも活かせる対人関係やかかわり方を育む世代でもあります。
5.まとめ
人材育成が大事との話はどの会社においても共通しています。
しかし人材育成で大事なものは、それぞれの世代や役職に応じても変わります。
若手ならばメンタルヘルスの調整を身に着けることで、うつ病対策となり、これから40年以上にわたる会社人生を心身ともに健康に生きる力の習得にもなります。
中間層やシニア層になれば、自らのことだけでなく、部下や社内においての役割も大きくなります。
それぞれのステージに合わせて、必要なスキルやかかわり方を身に着けることで、組織全体の成長が加速していきます。