
人材研修と聞くと、人事採用担当としてはどのような内容で誰を対象に実施するかとの発想になる方が多いと思います。
人材研修の内容や対象者も重要ではありますが、それよりも大事なものがあるのをご存知でしょうか?
今回は「人材研修の目的と効果性」についてお伝えします。
この記事の目次
1.研修の目的を本当に理解しているでしょうか?
人材研修をするにあたって、まず考えていただきたいのは研修を行う目的についてです。
あなたはなぜ企業で研修を行うと思いますか?
今さら研修の目的について聞かれても、戸惑ってしまうかもしれません。あまりにも当たり前すぎる質問だからです。
しかし、ドライブ中のカーナビに目的地を入れなければ到着しないように、研修においても目的を定めなければ、各々が何を目指すのかがわからず、さまようことになります。
これでは効果も今一つとなってもやむを得ないものです。
人材研修を行う一番大きな目的は「個人の成長を促すこと」です。これはおそらく大多数の人が認識している答えでしょう。
企業に属す個人が成長することで、組織全体の成長を促すことができるからです。
しかし、研修の目的はそれだけなのでしょうか?
技術職を対象とすれば、スキルの向上にかかわる研修がオーソドックスですが、全体向けの研修の際にも個人の成長だけが目的なのでしょうか
個人の成長を目的に実施していたとしても、全体向けの研修においては他の効果性が引き起こされることが考えられます。
企業としてはそのサブ効果を得ることも研修時の目的になるケースもあることでしょう。
そこで、今回は研修の効果性について、考えをめぐらしてみましょう。
2.社員研修がもたらす3つの効果
2-1.個人の成長による組織の成長
まず、研修の効果性の1つは、個人の成長による組織の成長です。
たとえば新人研修は高校や大学を卒業したばかりの新卒者向けの研修となります。
学生を卒業したばかりの状態で、社会人としてのルールや常識をしっかりと認識し、行動に移せるでしょうか。答えは「NO」でしょう。
ほとんどの方が経験したことがあると思いますが、卒業したばかりの頃には学生時代との当たり前と組織や社会人においての当たり前が違いすぎて、ギャップや戸惑い、混乱が生じるものです。
そこで新卒者向けの研修によって、社会人としての在り方やマナーを学び、身に着けていきます。
一人ひとりの個人が習得することで、組織においても受付の応対や電話対応などができるようになります。業務の知識や技術の研修によって、スキルの向上にもなります。
個人の成長がやがて組織の成長となって還元されるのです。
2-2.対人関係の接近
2つ目の研修の効果としては、対人関係の接近があります。対人関係の変容とも言い換えられるかもしれません。
たとえば中間管理者向けの研修には個人の技術的な向上だけでなく、管理職として部下の指導やマネジメントスキルの向上の研修を実施することが少なくないことでしょう。
トップダウン型のリーダーシップしか知らずに実施してきた管理職が、性格タイプに応じたリーダーシップを取れるようになることで、上司との部下との関係性が良好になることは少なくありません。
また、他部署との合同の研修を実施する場合に、敢えて部署の垣根を取り払って実施することで、交流が生じます。
部署ごとに分かれて作業していた環境から、他部署との交流が行われるようになったり、新たなつながりが生まれたりすることもあります。
このように研修後に社内の風通しが良好になったり、対人関係が近づいたりするなどの効果が生じることもたびたびあります。
2-3.組織の風土への影響
3つ目の研修の効果は組織風土への影響です。
今一度会社の理念や在り方などを共有したい場合に、研修を実施することもあります。意見交換を交えることで、一人ひとりに考え方を広めることもでき、社内の雰囲気にも影響を与えます。
特に経営陣自ら実施する研修では、企業のトップの考えを若手社員などに共有することができ、組織の風土にも影響をもたらします。
たとえば古い慣習が残っている企業において、トップ自らが「変革の時代が来ていること」「顧客第一主義のための挑戦の必要性」などを説くことで、ゆっくりと時間をかけながら企業の色合いを変えて、風土として定着していきます。
組織風土への影響を目的に実施する際には、経営陣によるスピーチを交えた研修の他に、外部講師を呼び、一人ひとりが考えるワークショップ形式で行われることもあります。
3.研修効果を出すために必要不可欠な2つの要素
研修の目的や効果性を最大限に発揮するために重要な要素は大きく2つあります。
1つは目的や効果性を明らかにし、共有することです。
研修を実施するものが認識するのはもちろんのこと、受ける個人においても
- 何のための研修なのか
- どのような目的で行われているのか
をきちんと認識してもらうことが重要です。
伝えたことが伝わっているとは限りません。
研修実施前に、具体的に周知するとともに、研修当日も冒頭に再度問いかけて、目的を明らかにした状態で行うのが望ましいでしょう。
さもなければ、ドライブ中のカーナビに目的地が設定されていないような状態となり、参加者が研修のゴールが設定できずに目的にたどり着かないこともあるからです。
もう1つは主体性です。
どれほど準備を入念に行い、優秀な外部講師を派遣したとしても、一人ひとりが受け身では研修内容を吸収してもらうことはできません。積極的に参加をし、主体的に学ぶことが必要です。
個人が積極的に参加するためにどのような工夫ができるのかを考えてみましょう。
研修後にレポート提出を求める企業もありますが、この方法はあまり得策ではありません。
なぜなら個人の目的やゴールが「レポート提出」となり、自分ごとにならないからです。
個人が主体的に参加するためには、「個人の動機付け」が欠かせません。
参加する個人が各々のステージや目標に合わせて
- 何を学びたいのか
- 何を得たいのか
を考えて参加する姿勢が必要になります。
マネジメント研修においても、ある人にとっては「部下との良好なコミュニケーションが取れるようなマネジメント力をつけることで、雰囲気のいい部署づくり」が得たいものかもしれません。
ある人にとっては「マネジメントスキルをつけて、さらなる出世」が得たいものかもしれません。
事前に一人ひとりと面談を実施して、本当に得たいものを把握しておくのも主体性を高めるうえで有効です。
研修ごとにそこから学び取りたいものを落とし込むことで、受け身で学ぶのではなく、能動的かつ主体的に吸収していくことにも転じます。
4.まとめ
人材研修を行う以上は、最大限の効果をもたらしたいところです。
そのために、研修を行う意義や目的を今一度考えるとよいでしょう。
マネジメント研修はマネジメントスキルを学ぶだけが目的ではもったいないものです。
個人の成長によって組織の成長や発展をもたらすことを念頭に置き、一人ひとりが能動的かつ主体的に参加する動機づけをしっかり行い、最大限度の効果性を漏らせるように工夫を凝らしてみてはいかがでしょうか。