
社員教育は、企業の経営計画の達成に向けて、社内の「人材」の能力を最大限に活用するために知識や能力を身につけ、企業の利益確保に貢献する人材を育成することが目的です。
また、社会人として必要な知識やルールを身につけ、人間として成長し、企業を通して社会に貢献することで、自己実現を達成するためにも非常に重要となります。
現在は、社員教育に非常に力を入れる企業が多くなっています。
そこで、社員教育にはどのようなものがあるのか、そして効果的な社員教育を行うためにはどうすればいいのかについて解説していきます。
※社員の育成計画の立案を検討したい方は社員の教育計画の必要性と具体的な立案方法についてをご覧ください。
この記事の目次
1. 社員教育の種類(研修)と目的について
社員教育には、その目的に合わせた様々な種類があります。実施のタイミングや対象者によって、その目的や内容が異なってきます。
それぞれの特徴や内容を理解して、効果的な社員教育プログラムを実施し、社員の成長につなげてください。
1.1. 内定者研修
内定者研修は、その企業に内定が決まった人に対しての研修になります。内定者研修を実施する目的は、以下のようになります。
1)内定者の不安の解消
内定者研修は、学生から社会人になる上での不安や会社になじむことができるかという不安を解消する役割があります。
同期の内定者がいる場合は、そのコミュニケーションを図り、新入社員になった際に、スムーズな連携ができるための準備的な役割もあります。
2)社会人になるための意識改革
学生と社会人の違いを知り、社会人になるための自覚を持つための研修になります。
社会人対して求められることや、企業の一員として、成果を発揮するために必要なことなどを理解し、入社後に1日も早く社会人として自立するための基礎作りを行うことになります。
3)内定辞退の防止
現在の人手不足の状況下では、比較的簡単に複数の企業から内定をもらうことになります。そうなると企業側も内定辞退をされてしまうリスクが発生します。
また、入社まで期間が空きすぎると、企業に対しての想いや入社への意識が薄くなることや、企業側から必要と思われていないというマイナスの部分が多くなってしまいます。
そのため、内定式を行うことで企業への愛着を持たせたり、同期の仲間との一体感なども持つことができるため、内定辞退を防止することができます。
最近では、保護者の意見に左右される内定者も多いため、保護者に確実に入社を後押ししてもらう要素の1つとしての部分も見られます。
4)内定者のスキルアップ
新入社員として入社して、すぐに実務に取り掛かることのできるように、ビジネスマナーなどのスキルアップを行ないます。
新入社員研修の負担を軽減させるとともに、より早く実務に入れることや社会人としての基礎的なスキルを身につけておくことで、社会人になる自覚を持たせ入社に対してのモチベーションアップにもつながります。
1-2. 新入社員研修
新入社員研修は、会社に入社した際に行われる研修になります。
基本的には、前述の内定者研修と同じような内容になりますが、事前に内定者研修を行なった場合は、職種別や部署別の研修を行うことになります。
また、最近では早期離職防止を目的として研修を実施するケースも見られます。
1-3. 2年目研修
2年目研修の目的は、入社して2年を迎える社員に対して実施します。内定者研修を実施する目的は、以下のようになります。
1)1年間の振り返り
新入社員研修から1年が経過し、そのフォローアップ研修の意味もあり、新入社員研修の締めの位置づけでもあります。仕事でもできることが増えたり、得意なもの苦手なものが見えてきたりしていると思われます。
そのため、1年間を振り返り、何ができるようになったのか?や、現状の問題点・課題は何か?を再確認する機会になります。
2)先輩社員としての心構えの確認
入社して2年目を迎えることで、先輩社員としての役割も担うことになります。メンター制度を導入している企業においては、メンターとしての役割も期待されると思われます。今までのように、言われたことをやるという立場から、自ら考えて仕事を行うということも必要であり、その心構えが必要になります。
3)早期離職の防止
大卒の社員の場合、3年以内の離職率は30%を超えると言われています。新入社員として、仕事を覚えるのに一生懸命だった頃と比べると、仕事を中心とした生活にも慣れ、周りも見えてくることかと思います。
そうなると、友人やネットなどの情報で自社と他社の状況なども比較することができるようになってきます。
せっかく1年かけて育てた社員がここで辞めてしまっては何にもなりません。そのため、1年目の振り返りと共に、上司から仕事の頑張りのフィードバックや2年目の目標設定などを行うことで仕事に対してのモチベーションを上げることで、離職を防止することができます。
1-4. メンター研修
メンター研修は、メンター制度の導入する際の、メンターの育成のための研修になります。
メンター制度とは、入社3年~5年位の他部署の先輩社員が、新入社員・若手社員などに対して、仕事に対する不安の解消や、精神的な面などにおいてサポートを行う制度です。
そのため、メンター制度の説明や、守秘義務など遵守すべきものの説明や、人の話を聴くための傾聴スキルやカウンセリングスキルなどの研修を行うことになります。
メンター制度についてはメンター制度の導入で起こりがちな問題点と効果的に進める方法で詳しく紹介しています。
1-5. 中堅社員研修
中堅社員に求められるものは、大きく以下の3つの役割があります。
1)プレーヤーとしての役割
自身が業務を行う上で、率先して成果を出すために行動すること
2)フォロアーとしての役割
上司と新入社員の間で、双方をサポートするために行動すること
3)リーダーとしての役割
チームのリーダーとして、チームをまとめ成果を出すために行動すること
これら3つの役割を発揮するために、フォロワーシップやリーダーシップ、ロジカルシンキング、課題解決、コミュニケーション研修などの中から、自社の課題に合った研修を実施することになります。
1-6. 管理者研修
管理者研修は、今までのプレーヤー中心の業務から、マネジメント中心の業務になります。そのためのマネジメントに必要な、仕事の管理や改善、人間関係の構築、部下の育成などを学ぶ必要があります。
また、管理者として組織の中での目標達成も大きな業務となるため、目標達成に向けた課題解決能力なども身につける必要があります。
2. 社員育成の方法について
社員育成の方法について上記のような研修のほか、以下のような教育制度もあります。目的に応じて使い分けるようにしましょう。
OJT
OJTとは、「On the Job Traininng」の略称で、実際の職場で実務を通して仕事を覚えてもらう教育手法になります。主に新入社員や未経験者の実務教育に用いられます。
OFF-JT
OFF-JTとは「Off-The-Job Training」の略称で、実際の現場を離れて外部指導者や外部研修を設け、授業形式にて行うものになります。その他、グループワークなども当てはまります。
※OFF-JTを検討される際はOFF-JTのメリットとデメリットを知り、研修で効果を出す方法を参考にしてみてください。
マニュアル学習とは
あらかじめ決まったルール、作業や操作の手順についてまとめたものになります。そのマニュアルを読むことで知識や技術を学ぶことができます。
e-ラーニングとは
インターネットを使った学習方法になります。インターネットに接続していれば、どこでもスマートフォンからでも学習可能です。事前に準備されたものや、ライブで行う方法などもあります。
通信教育とは
自宅に届いたテキストを中心に学習を行い、添削課題を提出し、提出した課題を講師に添削していただいて学習を行う方法になります。
その他、社員研修について
上記であげたものの他にも以下のような研修があります。
ビジネスマナー研修
社会人にとって必要な、身だしなみ、お辞儀の仕方、言葉遣い、あいさつ、名刺の受け渡し、電話応対、メールの送り方などを学びます。
コンプライアンス研修
コンプライアンスとは、法令遵守という意味で、近年、コンプライアンスに対する意識も高まり、法令遵守に加え企業規則の遵守も求められています。そのため、従業員へコンプライアンスの重要性や違反のリスク、企業規則の基本的な知識を身につけるために行われます。
目標管理研修
目標管理は、どのポジションであっても非常に重要であるため、目標設定の方法、目標達成のための行動、目標達成ためのフィードバック方法などを学びます。
リーダーシップ研修
今後、指導者としてリーダーシップが求められる対象者に対して、その知識や技術の習得を目的とした研修になります。
現在では、リーダーに求められる能力も多様化し、従来の指導力や統率力に加え、コーチングや感情のコントロール方法など、その範囲は拡大傾向にあります。
コミュニケーション研修
仕事の基本となる報告・連絡・相談から、話し方・聴き方などを学びます。最近では、SNSなどの発達により、コミュニケーション手法が多様化しているため、人と直接かかわる際のスキルが求められています。
ストレスマネジメント研修
最近では、ストレス疾患なども増加していることや、50名以上の労働者のいる事業所では、ストレスチェックも義務づけられており、ストレスの対処方法を学ぶことは非常に重要です。
ストレス発生のメカニズムや、その対処法やリラクゼーション手法を学びます。
3. 社員教育の重要なポイントと注意点について
ここまで様々な社員教育の手法をお伝えしましたが、むやみやたらに取り入れても効果がありません。
社員教育の重要なポイントは、社員教育の目的を社員が理解し、社員教育に参加することで知識・能力が向上し、結果として企業の経営計画が達成し、自身の評価や満足につながるものとして行うことになります。
反面、注意点としては、目的を理解せずに強制的に参加させたり、参加することで仕事の負荷が増えるだけだと社員教育がデメリットにしかなりません。
そのため、社員教育の目的を理解してもらった上で参加してもらい、成果につながったことをしっかりとフィードバックや評価を行うことで社員教育がより有意義なものになります。
しっかりとこのようなポイントを押さえた社員教育を実施して下さい。
社員の自己実現に向けて効果的な社員教育を!
企業にとっても、社員にとっても非常に重要なものであり、ITやAIなどの進化に伴い、企業や社員に求められるものは、日々変化しています。
社会人として必須のスキルはもちろんのこと、今求められる知識やスキルを身につけて、激変する環境化に対応する必要があります。
社員教育を効果的に実施し、企業の経営計画の達成や、社員の自己実現につなげて下さい。