メンター制度の導入で起こりがちな問題点と効果的に進める方法

現状、大卒で3年以内に30%以上の社員が離職する中で、組織において新入社員や若手社員の教育・定着は、非常に重要になります。

その1つの手法として取り入れられているものが「メンター制度」というものです。しかし、メンター制度を導入する上では気をつけなければならないこともあります。

今回は、新入社員や若手社員のために非常に有効とされている「メンター制度」についてのポイントと、導入の際の注意点についてお伝えしていきます。


メンター制度とは

メンター制度は、厚生労働省も推奨しているもので、新入社員や若手社員の離職防止・職場定着のために、自分の上司以外の入社3年~5年位の他部署の先輩社員が、仕事に対する不安の解消や、精神的な面などにおいてサポートを行う制度のことです。

直接的な仕事の指導は上司が行い、不安や悩みの解消という部分をメンターが行うというものです。

これ以外にも、「自分自身がこうなりたい!」「こんな風に働きたい!」などと感じる、ロールモデル(モデリング)となる人や、自分自身が尊敬する人物も、広い意味ではメンターと成り得る存在になります。

メンターの語源は、英語のmentor(助言者・教育者・指導者)に由来していると言われています。
その中で、サポートを行う側の人のことを「メンター」新入社員・若手社員など、サポートされる側の人を「メンティ」と呼ぶのが一般的です。

メンター制度の効果

メンター制度の効果としては、これらの3つが挙げられます。

① 新入社員や若手社員(メンティ)の離職防止・職場定着が促進される

新入社員や若手社員の離職の原因に、職場の人間関係や仕事に対する悩みなど、直接上司に相談できない内容などが多く含まれています。

そのため、他部署の直接的に利害関係のない先輩社員に相談できる体制があることで、早いタイミングで不安や悩みを相談でき、そうした悩みの解消につなげることができます。

そうすることで、職場に適応できるようになり、結果として離職を防ぐことができます。

② サポートする側のメンターの成長にもつながる

自分自身がメンターとなることで、様々な気づきが生まれることになります。

実際に、メンティとの年齢や社歴もそれほど大きな差は無く、メンターを行なうことで、先輩社員としての自覚が生まれ、自分が経験してきた過去も振り返ることができます。

自分も新入社員の時に、「どのような壁にぶつかり、それをどう乗り越えてきたのか」といったことを振り返ることで、自分自身の成長も実感することができ、更なる成長に向けてのモチベーションにもつながるのです。

③ 社内の活性化やコミュニケーションの円滑化につながる

メンター制度を導入する場合、メンターとしてサポートを行う社員は、メンティの他の部署の社員が行うことになります。

そのため、それぞれの部署内で業務を行なっている際には無かった、他部署の社員との新たな関わりが生まれることになります。

メンティが複数いる場合などは様々な部署内で新たな関わりが生まれ、それによって社員同士のコミュニケーションが活性化し、メンター制度以外のところでも円滑なコミュニケーションが行われることになります。

メンター制度がうまくいかない理由

ここまで、メンター制度のうまくいく理由ばかりを紹介してきましたが、うまくいかない理由についても理解しておく必要があります。

メンター制度がうまくいかない理由として下記の4つが挙げられます。

① メンターへの負担が大きすぎる

メンターを行なうことのメリットについては先程述べましたが、そのメリットの反面、通常業務に加えてメンターを行なうことでメンターへの負担は非常に大きくなります。

特に、他人では解決しづらい精神的な悩みなどについては、相談されるメンター側への負荷も非常に大きくなります。

そのため、メンターに対してのサポート体制として、メンターの上司などに対してもフォローを依頼するなどの配慮が必要になります。

② メンターとメンティの関係性

メンター制度を導入するということで、メンターとメンティとしての関係性がスタートすることになりますが、それぞれの考えや個性を持った大人です。

そのため、2人の相性が合わないケースなどは、メンター制度そのものがマイナスになってしまいます。

これを回避するためにも事前に、それぞれのタイプを認識するための適性検査の実施やメンター制度を導入する人事部などが上司に対して性格特性などをヒアリングするなどして、メンターとメンティのミスマッチを少しでも防ぐための配慮が必要になります。

また、メンティがメンターを指名するようなパターンの場合についても、その適性などを人事部などがヒアリングを行ない、ミスマッチを最小限に抑える必要があります。

③ メンターのスキル不足

仕事や精神的な悩みを相談され、それを解決に向けていくためには、カウンセリングやコーチングなどの知識やスキルなどが必要な部分もあります。

メンターの対応次第では、スキル不足により事態がより悪化してしまうことも想定されます。

そのため、メンターとして決まった段階で、メンターとして最低限必要な知識・スキルを身につける事前研修を行う必要があります。

また、メンターがサポートしきれない場合などのリファー先なども明確にする必要があります。

④ メンター制度の導入の目的の共有化

メンター制度導入に対して、社内での目的が共有されていないと、メンター制度の導入そのものがマイナスになり兼ねません。

メンターやメンティだけが取り組むものとして、全て現場に丸投げしたり、忙しいタイミングでメンターやメンティが現場から抜けてしまうことで、他のスタッフの不満につながることも予想されます。

そのため、メンター制度をどういう目的で導入するか、メンター制度の導入によってどのようなメリットが生まれるか、を事前に社内で共有を行ない、社内の取り組みとして行うことが必要です。

メンター制度を効果的に活用する方法

注意点はあるものの、メンター制度を導入することで、様々な効果が期待できます。

ここでは、厚生労働省のメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアルの内容を参考に、効果的な活用方法をまとめていきます。

① メンター制度導入のための事前準備の実施

メンター制度を導入するために、以下の内容について事前準備を行う必要があります。

・取り組み課題を整理して目的を設定すること
・全体の計画を策定すること
・経営幹部の合意を得ること

② メンター制度実施体制の確立

メンター制度の導入が決まったら、メンター制度を推進していくための体制を確立するなどして、具体的な実施計画が必要になります。

それを実施していくために、必要に応じて推進チームなどを設置することで効果的に運用が可能になります。

③ 実施計画の作成

実施計画を作成し、それを具体的に進めていく必要があります。

・対象者の選定
・事前研修の開催
・メンタリングの実施
・振り返りと改善に向けた課題の整理

④ 運用ルールの決定

運用ルールを決めることで、メンター・メンティ共に、安心して実施することができます。運用ルールには、必須項目と、会社の状況に合わせて決める任意項目の2パターンがあります。

【必須項目】
・メンタリングで話し合われた内容を口外しないという「守秘義務」を守ること
・メンタリングにおいて不都合が生じたときの「相談窓口」を設けること
・メンタリングも業務の一環と位置づけ、原則として「就業時間内」に行うこと

【任意項目 例】
・どれ位の期間実施するのか?
・1回の面談時間をどれ位にするのか?
・どのようにして面談するのか?(対面、オンライン、社内、社外など)
・話し合う内容はどうするのか?
・面談後の進捗確認やフォローをどうするのか?
・メンター制度終了後は、どうするのか?
・メンタリング実施の際の経費は、どのようにするのか?      など

まとめ

人手不足が深刻な状態の中で、新入社員・若手社員の離職防止・職場定着は大きな課題となっています。
そのため、厚生労働省も推奨している「メンター制度」は非常に効果的な制度となります。

今回、ご紹介したメリット・デメリットを理解し、自社に合わせて実施することで大きな成果を発揮できると思われます。このメンター制度を活用し、離職防止・職場定着はもちろんのこと、メンターの成長や社内コミュニケーションの活性化に活かして下さい。

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